米国で相次ぐ科学者の死亡・失踪 10人のケースを整理

ロスアラモス国立研究所(2025年2月)|M.M.PHOTO / Shutterstock.com

 アメリカで、宇宙開発や核、医薬分野に関わる科学者や技術者の死亡や失踪が相次いでいる。複数の主要メディアが報じ、議会や連邦捜査局(FBI)が調査に乗り出したとされるが、現時点で一連の事案の関連性は確認されていない。

 SNSなどではさまざまな憶測が広がっているが、情報は断片的で、事実関係の整理が求められている。主な事例を時系列も踏まえて整理する。

◆主な科学者・関係者の死亡・失踪
 報じられている主な事例を人物ごとに整理する。

ウィリアム・ニール・マカスランド(宇宙・軍/失踪)
 元アメリカ空軍少将で、軍の宇宙関連プログラムに関与したとされる人物。2026年に失踪し、所在は確認されていない。軍・宇宙分野の経歴から注目を集めている。

マイケル・ヒックス(宇宙開発/死亡)
 航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)の研究者。2023年に死亡。死因や経緯について公表情報は限られており、詳細は明らかになっていない。

フランク・メイワルド(宇宙開発/死亡)
 JPL関係者。死亡が報じられているが、発生時期や状況については断片的な情報にとどまる。同機関関係者の事案として言及されることが多い。

モニカ・レザ(宇宙開発/失踪)
 JPLの幹部。2023年以降、行方不明とされる。失踪時の状況やその後の手がかりについては公表されていない。

ヌーノ・ロウレイロ(基礎科学/死亡)
 マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で、プラズマ物理が専門。2025年に銃撃を受け死亡したと報じられている。事件として捜査対象となったケース。

ジェイソン・トーマス(医薬/死亡)
 製薬分野の研究者。2025年に失踪後、2026年に遺体で発見された。失踪から発見まで時間差があり、経緯の詳細は限定的にしか明らかになっていない。

アンソニー・チャベス(技術/失踪)
 ニューメキシコ州で技術関連業務に従事。2025年に失踪し、現在も所在不明とされる。同州で相次いだ失踪事案の一つに位置づけられている。

メリッサ・カシアス(技術/失踪)
 同じくニューメキシコ州の関係者。2025年に失踪。地域内で複数の人物が短期間に行方不明となったケースの一つとして言及される。

スティーブン・ガルシア(技術/失踪)
 ニューメキシコ州の技術者。2025年に失踪し、事件性の有無を含め調査が続いている。他の失踪事案との関連は確認されていない。

ジョシュア・ルブラン(宇宙・エネルギー/死亡)
 NASA関連プロジェクトに関わるエンジニア。2025年、車両火災の現場で死亡が確認された。失踪後に発見されたケースとされ、状況の詳細は調査対象となっている。

◆共通点と相違点、ニューメキシコ州での集中
 これらの事案には、宇宙開発や政府関連分野との関わりという共通点が指摘されている。一方で、発生時期や地域、死因や経緯は大きく異なる。

 事故や事件として処理されているケースもあれば、現在も所在が確認されていないケースもある。現時点では、単一の要因や一連の事象として説明できる状況にはない。

 特に注目されているのが、ニューメキシコ州で複数の失踪事案が報告されている点だ。同州にはロスアラモス国立研究所など、核やエネルギー関連の研究機関が集まっている。

 ただし、現地当局や専門家の見解では、これらの失踪が組織的に結びついていることを示す証拠は確認されていない。地域的な集中についても、偶然や個別事情の重なりである可能性が指摘されている。

◆調査の動きと見解 広がる憶測
 アメリカ議会の一部議員は、一連の事案が国家安全保障に関わる可能性も否定できないとして、関係機関に調査を求めている。FBIも情報収集を進めていると報じられている。

 一方で、専門家の多くは慎重な見方を示す。現時点では、これらのケースを体系的に結びつける証拠はなく、個別の事情が重なっている可能性が高いとされる。

 SNSでは、これらの事案を結びつける形でさまざまな憶測が広がっている。しかし、確認されていない情報も多く、過度な一般化には注意が必要だ。

 複数の科学者や関係者に異常事態が発生していることは事実だが、それらが一つの出来事として結びつくかどうかは、現時点では明らかになっていない。

Text by 白石千尋