ディープシークの何が危険なのか 使う前に知っておきたい注意点
Andy Wong / AP Photo
中国の人工知能(AI)スタートアップ企業DeepSeek(ディープシーク)が開発した無料のオープンソースAIアシスタント「R1」が、大きな注目を集めている。だが、当初の絶賛から一転し、海外メディアは数々の危険性を指摘し始めた。
◆アプリストアでダウンロード数首位に
英BBCは、今年1月に発表されたこのチャットボットについて、「アメリカの競合製品と同等の性能を持ちながら、トレーニングコストを大幅に抑制したと主張している」と伝える。
米経済誌フォーブスによると、R1は現在、アップルのアプリストアで最もダウンロードされている無料アプリとなっている。AI分析企業トップビューが実施した2340件のツイート分析では、好意的な評価が38.8%、中立的な評価が47.3%、否定的な評価は13.9%だった。
◆相次ぐプライバシーへの懸念
だが、絶賛の相次いだDeepSeekも、雲行きが怪しくなってきた。プライバシーへの懸念が指摘されている。
フォーブス誌は、英AIコンサルタントのヘザー・マレー氏の指摘として、「ユーザーの退会後もデータを保持し続け、すべてのデータを中国のサーバーに保存している」と伝えている。また、AI教育者のタラ・タミコ・トンプソン氏は、「プライバシーポリシーにキーストロークの監視が明記されている」と警告している。パスワードを含め、入力した文字列をすべて記録する可能性があり、ユーザーはそれに同意していることになる。
生成結果の正当性も疑問だ。中国政府の監督下にあるAIモデルであることから、天安門事件や台湾の主権など、政治的にセンシティブな話題にまつわる議論が制限されている。
欧州のニュース専門局ユーロニュースは、米AI安全・コンプライアンス企業エンクリプトAIの調査結果を報じている。それによると、R1は米オープンAIのモデルと比較して有害なコンテンツを11倍多く生成し、テストの83%で人種、性別、健康、宗教に関する差別的な出力が確認されたという。
同社の調査では、有害コンテンツのテストの45%で安全プロトコルがバイパスされ、犯罪計画ガイドや違法な武器情報、過激派のプロパガンダが生成された。
◆各国は規制・調査へ
各国は対応を進めている。フォーブスによると、米航空宇宙局(NASA)、アメリカ海軍、台湾、イタリア、テキサス州などの機関がDeepSeekの使用を禁止している。さらに、オーストラリア政府が「容認できない」安全保障上のリスクを理由に、気象局や選挙管理委員会を含むすべての政府機関でDeepSeekの使用とインストールを禁止した。
ユーロニュースは、ベルギー、フランス、アイルランドのデータ保護当局がDeepSeekに対し、ユーザーデータの処理と保存に関する情報提供を求める調査を開始したと報じている。また、イタリアのデータ保護当局は、同社の欧州データ規則への準拠性を確認するため、杭州DeepSeek人工知能社と北京DeepSeek人工知能社への調査に着手した。アメリカのホワイトハウスも現在、セキュリティ上の影響について調査を進めているという。
画期的と注目されたDeepSeekだが、早くも岐路に立たされている。