なぜ人々はブルースカイに乗り換えているのか Xとは違う魅力は?

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 イーロン・マスク氏のX(旧ツイッター)買収以来、代替のプラットフォームを探す動きが進んだが、ここ数週間でブルースカイのユーザー数が激増している。Xが失ったものを取り戻せると期待する人々が流入しており、移行の本格的転換期に入ったという見方もある。

◆避難先ナンバーワン? 流入続々
 2022年に起業家のイーロン・マスク氏がツイッターを買収した後、不満を抱いたユーザーが代替手段を探し始めた。当初はメタのスレッズやミニブログサービスのマストドンとともに、ブルースカイはいくつかの選択肢の一つだった。

 もっとも、スレッズはメタの既存のユーザーベースから恩恵を受けたものの、大衆の心をとらえられていない。マストドンは一般ユーザーにとって複雑で理解しにくかったとされる。

 ブルースカイは有望と思われたが、当時は招待制だったこともあり成長も鈍かった。しかし、今年のアメリカ大統領選の後、マスク氏がトランプ氏支持にXを利用したことに嫌気が差したユーザーが続出。その際、受け入れ先としてブルースカイの門戸が大きく開かれていることに気づいたと学術系ニュースサイト『カンバセーション』は説明する。以来、ブルースカイのユーザーベースは2000万人以上に増加し、その数は増え続けている。

◆Xは地雷原? やさしさを求めるユーザーたち
 ブルースカイは、元ツイッター最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシーが発案したプロジェクトとしてスタートし、現在は独立している。ユーザー同士が@xxxで呼び合い、返信、引用、再投稿の機能がXと似ていることが人気の理由の一つだとされる。

 一方、分散型SNSであるブルースカイは特定の個人や収益化を目指す企業に所有されておらず、ユーザー自身で情報管理が可能という点でXと一線を画す。アルゴリズムによるフィードの一方的な「プッシュ」を回避し、自分の興味や関係に基づいたフィードを構築して、それらをほかのユーザーと共有できる。また、設定からある種のコンテンツをミュートしたり、誰が自分と交流できるかをコントロールしたりすることもできるため、特定の政治的見解やヘイトスピーチ、嫌がらせから距離を置くことができる。さらに、現在のところブルースカイには広告がない。

 ニュースサイト『ZDNet』のライター、ジャック・ワレン氏は、無数の投稿が流れ枯れて行くだけのXに比べ、人々のエンゲージメントも高いと指摘する。Xが否定、分裂、嘲笑の地雷原と化したのに対し、ブルースカイはポジティブで包括的、協力的で、人々はお互いを気にかけているようだとしている。

 ブルースカイがエコーチェンバー(自分と似た意見の人だけが集まる空間)化しているという批判もあるが、独立系エンタメサイト『パジバ』は、Xの失敗から学ぶべきだと述べる。他人の意見に決して同意せず、ただ他人を傷つけたいという負け犬と関わる必要はないと主張。ネット上での時間を、議論や荒らしとの戦いにする必要はなく、ソーシャルメディアにやさしさと軽快さを望むことは悪くないとしている。

◆今が移り時? ユーザー数増加で使える場所に
 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、ブルースカイを利用し始めた理由を「クリティカル・マス(サービスの普及が一気に跳ね上がる分岐点)」に達したからだとしている(ニューヨーク・タイムズ紙)。

 そもそも専門知識を持つ人々から学び交流するための場としてツイッターを開始した同氏だが、Xが好きではなくなっても、誰もがそこにいたという理由でとどまったとしている。現在のブルースカイのユーザー数はまだまだXより少ないが、今やスマートで有益な分析を見つける場所になったと述べている。(同)

 カンバセーションも、この数週間でXからブルースカイへの移行が転換期を迎えたとみており、今後定着するかどうかが注目される。

Text by 山川 真智子