ChatGPTのアプリストア開店 その可能性と課題とは

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◆チャットボットのダークサイド
 さまざまな可能性がある一方で、未開の領域だからこそのリスクもある。クオーツの記事は、GPTストア開設からまもなく「AI彼女のボットがあふれている」と報じた。「あふれている」という表現は少し誇張しているようにも感じられるが、GPTストアで「ガールフレンド(girlfriend)」と検索すると、韓国人彼女や仮想恋人などといったGPTがヒットする。

 クオーツは、AI彼女のボットはオープンAIの利用規約に反していると指摘する。実際、GPTストアに関する利用規約には、「恋愛関係を育むことや規制された活動を行うことに特化したGPTを認めない」と明記されている。一方で、パーソナルなバーチャルアシスタントとAI彼女の境界線は必ずしも明確ではなさそうだ。

 ガーディアンの記事は、デジタルな恋愛関係を構築しようとする動きは決して新しいものではなく、1992年ごろからビデオゲームの世界には存在していたし、AI彼女のようなチャットボットはすでに世の中に存在しているとしたうえで、チャットボットのリスクを指摘する。過去、AIチャットボットがセクハラを起こした事例もある。また、バーチャル世界の「彼女」が現実世界のジェンダーステレオタイプやセクシスト的な態度を助長するといった点も懸念事項である。

 他方、パーソナルな交友関係を構築するチャットボットに人気が集まる背景には、アメリカなどで指摘されている孤独や孤立の問題が存在している。新型コロナウイルスのパンデミック発生以前から、アメリカの成人の約半数が何らかの孤独を経験していたとアメリカ厚生省は指摘する。

 GPTストアによってさまざまなチャットボットがさらに普及し、ボットがより人間のコミュニケーションに近づくにつれ、バーチャルとリアルの境界線はますます曖昧になる。同時に、デジタルなコミュニケーションに関する規制については、今後よりオープンな議論が必要となりそうだ。

Text by MAKI NAKATA