皮膚がん治療の可能性のある石鹸、14歳が開発 米若手科学者コンペで優勝

ヘイメン・ベケレ|3M and Discovery Education

◆若き科学者の想いとは
 4歳までエチオピアで育ったベケレ。炎天下のなかで働く労働者たちのことが記憶にあり、今回の石鹸の開発につながったという。アイデアを考えるにあたって、科学的に優れているだけでなく、より多くの人に届けることができるかどうかという点を考慮したという。既存の皮膚がん治療手術や、治療薬は高価であり、低所得者層には買う余裕がない。彼のプレゼンテーションによれば、現状、皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)の回復率は、アメリカでは98%に対し、アフリカでは20%だという。5 年後には非営利団体を立ち上げて、皮膚がん治療の石鹸をできるだけ多くの人に届けたいとベケレは構想する。また、中長期的には電子工学者として未来の技術に貢献したいと語る。コンペの優勝賞金2万5000ドルの使途については、一部は石鹸のプロジェクトに投資し、残りは将来の大学の学費のために貯金するという

 他9名のファイナリストもそれぞれ優れたアイデアを持つ。たとえば、オレゴン州出身の14歳、アニーシャ・ドゥートは、昆布を活用した食料危機と気候変動の課題解決策を提案。単純に昆布の有効性を実験するだけでなく、AI(人工知能)の機械学習を活用して、土壌の質の予測モデルを構築したいと語る。同じく14歳のショーン・ジャンは、視覚障害を持つ人のための新しいナビゲーションシステムを提案。4方向に対してそれぞれ異なる音の合図を設定し、音を通じて障害物の接近を知らせるプログラムを開発した。若き優秀な科学者たちが、医療や気候変動といった今後ますます深刻化する課題に対して、クリエイティブな解決策を生み出す未来に期待したい。

Text by MAKI NAKATA