AIに著作権なし、米裁判所が判断

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◆過去の判例に倣うも、人的著作性の境界線は揺らぐ
 著作権は「現在知られている、または後に開発されるあらゆる有形の表現媒体に固定された著作物のオリジナル作品」に適応されるとあり、新しい技術に順応できるような形で定義されているが、新たな技術や媒体を活用したとしても、人間の創造性というものが必要条件になっている。今回の判断でも、人的著作性が、作権の根本的にあるもの(bedrock)だと強調され、裁判における議論では過去のいくつかの判例が持ち出された。

 たとえば、1884年の裁判において、最高裁判所は写真が著作権で守られる対象であるという判断を下した。この判例においては、カメラ(機械)はレンズの前にある物体を再現したに過ぎないが、写真という結果が、著作者のオリジナルな発案を表現したものだという点において、人的著作性が認められた。

 また、著作権法においては、著作者の具体的な定義はないものの、知的、創造的、または芸術的な労働の能力を備えた発案者、つまりは人間である必要があると定義されている。過去、猿が撮った写真に関する著作権の裁判があったが、人間以外の動物には著作権は適応されなかった。

 今回の判決は人的著作性を鑑みた上で、比較的わかりやすい事例ではあったようだが、議論の中では、生成AIの使用が一般化しつつあるなか、著作権における新たなフロンティアに近づいているという言及もあった。どれだけ人間のインプットがあれば、人的著作性が認定されるのか。著作権で保護された作品の学習をもとに生成された作品の著作権の問題はどうなるのか。AIを使った作品作りを促すために著作権はどのように活用されるべきなのかといったさまざまな検討課題が、今後ますます増えていくことが予測される。生成AIの台頭によって人的境界線が揺らぎつつあるなか、今後、司法の判断も更新されていく可能性があるのではないだろうか。

Text by MAKI NAKATA