「宇宙人からではない」2019年の謎の電波信号 追跡調査で判明

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◆徹底的な再調査で得られた真実とは
 地球外生命体の可能性は英ガーディアン紙が当時大きく取り上げ、一躍世間の注目を集めた。リッスン・プロジェクトが先ごろ公開した動画によると、研究員たちは科学的知見に立脚した報道に感謝しつつも、当時単なる「候補1」であったこの信号が真に地球外からのものであるかどうかを検証する強い重圧を感じるようになる。

 そこで研究員たちは、単体で評価する限り宇宙からのシグナルであるとみられるBLC1の信号を、より多角的に分析することにした。カナダのCTVは、研究チームが2020年と2021年の同じ時期に望遠鏡をプロキシマ・ケンタウリに向けたところ、同じ電波を受信することはできなかったと報じている。このことから、信号は地上の無線通信の干渉によるものであり、2019年当時のみ稼働していた何らかの機器によるものである可能性が浮上した。

 また、シャイフ氏らが同望遠鏡による膨大な量の既存の受信データを分析したところ、約30のケースでBLC1と酷似したパターンの電波が確認された。これらはいずれも、望遠鏡がプロキシマ・ケンタウリ以外の方角を向いている間も受信を続けていた。以上よりリッスン・プロジェクトのチームは、2019年に観測されたBLC1について、地球上の2種類の電波が互いに干渉したものであったと結論づけている。望遠鏡が特定の角度を向いたタイミングでのみBLC1が受信された理由は定かでないが、周期的に角度を変える望遠鏡と電波の発信源の動作が偶然同調していたのではないかとシャイフ氏は考えている。動画のなかでシャイフ氏は、「なので、絶対にエイリアンではありません」と寂しげに笑う。

◆今後の探査に向け一歩前進
 結果的にBLC1は地球外生命体の存在を告げるものではなかったが、今後の探査に向けてプロジェクトを前進させた。シャイフ氏は『スペース.com』に対し、ここまで大々的に信号が精査されたことは過去に例がなかったと述べている。真のシグナルか否かをより分ける正確なチェックリストを構築するうえで、有意義な成果を得られたとの自己評価だ。

 今回誤検知された電波の発信源は特定に至っていないが、パークス天文台の半径数百キロ内に位置する公算が高い。CTVは具体的な改善策として、地理的に離れた複数の天文台のデータを比較することも有効だと指摘している。

 プロジェクトは今後、疑わしきデータを検出するアルゴリズムを鍛えるなどし、精度を向上する考えだ。また、南アフリカでは64台のディッシュが連動するMeerKAT(ミーアキャット)電波望遠鏡がオンライン接続を予定しているなど、探査環境の向上が期待されている。リッスン・プロジェクトは今後も驚くべき発見を届けてくれることだろう。

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Text by 青葉やまと