寝るときに腕にはめる基礎体温計「Ava」が欧米で人気 排卵日を高確率で検知

Ava Science

 自然妊娠できる期間が1ヶ月のうち数日しかないことはよく知られている。妊娠したい女性は、排卵期を正確に把握することが必要で、そのために基礎体温を毎朝測るのは妊活の基本だ。日本で販売されている基礎体温計は、ほとんどが口内か脇の下で計測するタイプで、最近では数秒で計測できるタイプもある。ただし、毎日同じ時間に、目覚めてすぐ、安静にして測るべきで面倒に感じるかもしれない。また、基礎体温計だけで排卵期を予測するのも難しいと言われる。

 2016年に発売された腕にはめるタイプの体温計「Ava」は、寝ている間に基礎体温を測ってくれ、排卵期を高い正確度で表示してくれると欧米で人気だ。

◆妊娠しやすい5日間を89%の確率で表示
 Avaは、腕時計のストラップのようなシリコンのベルトにセンサーがついた基礎体温計。スイスでデザインされ、欧米向けにAvaのサイトで販売されている。価格は約2万7700円(1年保証)だ。

 センサーが寝ている間に様々なデータを集める。そのデータの数は一晩に300万にもなるという。スイスのチューリヒ大学病院で行った1年間の臨床テストでは、妊娠可能期間5日(5.3日)間を89%の正確度で示して、その正確さが確かめられた。

 普通、妊娠可能期間は、冒頭の基礎体温や尿中に排出されるLH(黄体形成ホルモン)の濃度といった単一の指標で予測する。一方、Avaが測定するのは、体温、脈拍、呼吸数、心拍変動、組織の毛細血管系の血流(灌流)、睡眠のリズム、水分や汗の状態、熱放出、睡眠時間・睡眠の質と多岐にわたる。データは毎朝、スマホに転送される。

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◆月経不順の人に向けても研究中
 Avaは、24~35日の月経(生理)周期をもつ人なら、信頼できる妊娠可能期間を表示してくれる。子宮内膜症にかかっていても、排卵が中断されなければ使えるという。使うことが奨励されないのは、ホルモン避妊薬を取っている人、多嚢胞性卵巣症候群や視床下部性無月経の人など。また、避妊のためにAvaのデータを使うことは勧めていない。Avaサイトには、月経不順の人も使えるよう研究を進めていると書かれている。

 妊娠してからもAvaは役に立つ。日々の体調を見たり、心拍変動データから心理的なストレスレベルをチェックしたり、体重を記録すれば体重管理にも使える。産後、母乳育児をしていても、月経が再び始まったら使うことができる。

◆世界で1日に15人がAvaで妊娠成功か
 スイスのスタートアップのためのニュースサイト『Startupticker.ch』の報道によれば、Ava開発・販売元(Ava/Ava Science)は、「世界で1日に15人がAvaで妊娠に成功している」と話しているそうだ。共同設立者のレア・フォン・ビダーさんは、Ava使用者の3分の1が2人目の子どもがほしい女性だと述べている。

 Avaは画期的なアイデアだと商品としての注目度がとても高い上、スタートアップとしても高い評価を得ており、「トップ100スイスのスタートアップアウォード2017年」で1位になるなど受賞もしている。フォン・ビダーさん自身も、2018年、経済誌フォーブスが毎年選ぶ「30アンダー30」リスト(各業界で活躍する30歳未満の若手たち)の健康部門に選出されている。アメリカのCNBCは、フォン・ビダーさんは、別の共同設立者がなかなか妊娠できないことがきっかけとなって起業したと伝えている。

Text by 岩澤 里美