プラスチックを「食べる」酵素が発見 環境問題解決への期待高まる

Chanachai Saenghirun / Shutterstock.com

 米英の研究チームは4月16日、ペットボトルなどに使われるプラスチックの一種、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解する酵素を作製したと発表した。PETを含めプラスチック類は、適切に処理されずに海に流出することで海洋汚染の原因になっているが、この酵素が問題の解決に役立つことが期待されている。

◆新発見は偶然の産物
 この酵素は、米国エネルギー省の国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と英国ポーツマス大学の研究チームが作製したものだ。しかし研究チームは元々、新たな酵素を作製するつもりではなかった。研究チームは、天然に存在する細菌の中の酵素であり、PETを分解する性質を持つペターゼ(PETase)について研究していた際に偶然作製されたと説明している。

                                                                                                                 

 PETaseは2016年の論文で発表されたばかりのもので、研究チームは改良の可能性を調べるためにまずはこの酵素の構造を探ろうとしていた。その過程で、天然のものよりPETの分解能力に優れた酵素を一足飛びに作製してしまったという。

 研究チームを率いるマクギーハン教授は、「偶然の発見をする才能は、基礎科学研究においてしばしば重要な役割を果たす」とコメントしている。

 なお、今回の研究の基になった細菌は日本の研究チームが発見したもので、大阪府堺市のリサイクルセンターで発見されたことから「イデオネラ・サカイエンシス」と名付けられている。この細菌は、ペットボトルが豊富にある環境の中でPETを栄養源とするように進化したと考えられている。

◆実用化は? 環境問題解決に期待の声
 日本の研究チームが発見した元々の酵素には、PETを分解するスピードが産業規模のリサイクルに利用できるレベルではないという欠点があった。今回作製された酵素ではこの分解能力が向上しているため、実用化に向けた一歩前進となっている。マクギーハン教授は、分解性能は20%向上したとしている(16日の英ガーディアン紙)。

 研究チーム自身は、大幅な改良ではないとしながらも、「この予期せぬ発見は、こうした酵素をさらに改良する余地が多くあることを示している」とコメントしていて、分解にかかる時間をさらに短縮するために研究を続けているという。

 バイオ洗浄やバイオ燃料製造など産業用酵素は様々な分野で利用されているが、そうした酵素と同様に改良が行われていけば、今後酵素によるPETのリサイクルが実用化される可能性がある。このことが、現在重大な問題となっているプラスチックによる海洋汚染を解決する助けになるのではと期待の声が上がっている。

 プラスチックは自然環境下ではほとんど分解されない。日本では、容器包装リサイクル法が施行されるなど廃プラスチックの有効利用が進んでいるが、発展途上国などにはリサイクルが進んでいない国もあり、海に流出したプラスチックが海洋汚染の原因になっている。海洋にたまったプラスチックの重量は、2050年までに魚の量を上回るとする専門家の推計もある。

 マクギーハン教授は、「(プラスチックを生み出した)科学界は、実際の解決策を見つけ出すために使える技術を全て使わなければならない」として、問題解決への意欲を見せている。

◆革新的なリサイクル手法
 既にPETのリサイクルが定着している日本にもメリットはある。酵素を用いたリサイクル法が確立されれば、従来よりも効率的な方法となることが期待できるのだ。従来のリサイクル法の1つである「ケミカルリサイクル」は、使用済みの製品を化学分解により中間原料に戻して再利用するものだが、エネルギー消費が大きいという問題点があるとされている。PETaseを開発した日本の研究チームは、「微生物・酵素を用いたPET分解は化学処理と比べ、エネルギーの消費が小さく、環境にやさしい手法」だとしている。

 酵素によるPETの分解は、海洋汚染の解決の面でもエネルギー効率の面でも革新的な研究分野であり、今後の進展に注目が集まっている。

Text by 後藤万里

Recommends