発展を遂げる人工知能 新冷戦の兵器に

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◆非核兵器を制御するAI
 また、AIはドローンなどの無人移動機器やサイバー武器を制御するためにも利用されている。無人移動機器は通信が失われた時でも作動しなければならず、制御用AIを搭載する必要がある。さらに、AIによる制御によって、標的となったグループ制御装置を破壊してドローンの攻撃を制止することも防げる。制御機構が物理的にも電気的にも分散されているからである。

 サイバー武器も同様に、通信ができない場所でも作動しなければならない。サイバー攻撃に対抗するためにはとても短時間で反応する必要があるため、AIシステムが最も適しているだろう。

 AIの攻撃は、サイバー上や現実世界でほとんど瞬間的に行われ、人間がなぜ攻撃が必要なのか気づくよりも前に攻撃する判断を下すのである。人間が理解したり分析したりするよりも前に、AIシステムは攻撃目標や手法を変えることができる。例えば、あるAIシステムは工場を攻撃するためにドローンを打ち上げ、防衛するために反応したドローンを発見し、それらのドローンに対しサイバー攻撃を仕掛ける一連の動作を、一瞬の間に行うかもしれない。

◆AIの発展の重要性
 ある国と敵対する国家がすでにAIによる武器を持っているか、または将来持つことが予想される場合、その国家もまたAIによる武器を手にしたいと考えるだろう。AIによるサイバー攻撃が広く行われるのはもう少し先の話だ。

 AIによる摩擦が過熱しないようにするため、デジタル版ジュネーブ条約による世界各国の同意が必要になるかもしれない。その条約があっても、個人の国家主義者のグループ、民兵、犯罪組織、テロリスト、条約から離れた国家等によるAI攻撃は止められないだろう。つまりAIが武器として使われることはほぼ自明なことなのである。そしてたとえ自国の防衛のためであっても、他の国々もAIを武器として使うことがあるだろう。

 ロシアがAIを手にすることによって、AIを持っていない、もしくはAIの発展によるリスクを恐れて使用を制限している国家は、発展したAIを持つ国家と経済的にも軍事的にも競争することができなくなりつつある。発展したAIは軍事だけではなく、国家の経済活動も有利にするので、AIを持たない国家は大きく遅れをとるのだ。しかし最も重要なことは、多くの国々が洗練されたAIを手にすることにより、AIが冷戦時代の核兵器のように攻撃に対する抑止力となりうるということである。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Y.Ishida

The Conversation

Text by The Conversation