「若者をテクノロジー依存から守れ」シリコンバレーのベテランたちが決起

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 若年層のユーザが、時としてSNSをはじめとするスマホアプリに依存するあまり睡眠障害や憂鬱状態に陥ることは、もはや世界共通の悩みとなっている。この問題に対して、かつては悩みの種を作ることに関わってきたシリコンバレーのベテランが集まって、テクノロジーの依存に立ち向かう団体を立ち上げた。

◆ヒトに優しいテクノロジーを目指して
 テック系ニュースサイト『PCMag』によると、かつてグーグルでデザイン倫理に関するグループを率いていたトリスタン・ハリス氏をはじめとしたグーグルやフェイスブックの元幹部たちは、若年層のユーザがテクノロジーに依存する危険性を啓発する団体「人道的テクノロジー・センター」を立ち上げた。同団体の公式サイトには「私たちの社会はテクノロジーにハイジャックされている……テクノロジーによる私たちの注目をマネタイズするレースが始まって以来、そのレースが今や心の健康、民主主義、社会的つながり、そして子供たちといった社会を形作る柱を侵食している」と現状を憂える文言が掲載されている。

                                                                                                                 

 同団体は「人道的デザイン」というアイデアを提唱している。現在の支配的なアプリデザインは、ユーザの注目をひくことを重視するあまり、アプリにしか注目を向けられなくなる依存症を誘発する原因ともなっている。人道的デザインは、こうしたユーザの生活を支配してしまうアプリデザインに代えて、ユーザの心の健康を守り、過度に生活に干渉しないアプリ作りを推奨するのだ。

◆始まる公的な取り組み
 同団体の取り組みは、アイデアの提唱にとどまらない。ニューヨーク・タイムズ紙は、同団体がNPOのメディア監視グループであるコモン・センス・メディアから700万ドル(約7億6千万円)の資金援助を受けて、「トラスト・アバウト・テック」と命名されたキャンペーンを展開することを報じている。このキャンペーンでは、全米5万5千の公立学校の生徒・保護者・教師を対象として、SNS依存症に代表されるテクノロジーの悪影響に関する啓発活動が行われる。

 アメリカ議会へのロビー活動も展開する予定である。具体的には2つの議案をアメリカ上院議会に提出する予定だ。提出するひとつめの議案は、マサチューセッツ州選出のエドワード・J・マーケイ民主党議員が提出するテクノロジーが子供の健康に及ぼす影響を調査する委員会の設置である。もうひとつの議案は、カリフォルニア州選出のボブ・ハーツバーグ民主党議員が提出するもので、ユーザが特定できないボットの使用を禁止する規制である。この議案は、先のアメリカ大統領選挙においてロシアの干渉が疑われる根拠として、トランプ大統領のツイートがロシアが操作するボットによって拡散していたことに関連したものである。

◆求められるテック業界全体の取り組み
 以上のような活動が注目されて、同団体の共同設立者であるトリスタン・ハリス氏はコモン・センス・メディアの設立者であるジェームス・ステイヤー氏とともに、米テレビ局CBSの番組『CBS This Morning』に出演した。この番組においてハリス氏は、テクノロジーの悪影響に立ち向かう運動はフェイスブックやグーグルといったインターネット・サービスを提供する企業だけではなく、アップルやサムスンのようなスマホを販売する企業が結束して取り組まなければ効果が期待できないことを強調した。

 番組では、同氏がすすめる誰にでも簡単に実行できるスマホの誘惑を弱める方法も紹介されている。その方法とは、スマホの画面表示をグレイスケール(灰色の単色表示)に設定することだ。「ふつうはスマホの画面にカラフルなアイコンと赤いバッジ(赤い丸のなかに表示される数字)が表示されています。この色こそがスマホに依存させる魅惑的な報酬となっているのです。しかし、グレイスケールにした途端、この魅力は薄まります。それでいて、スマホは問題なく使えるのです」と同氏はこの方法の意味を説明していた。

Text by 吉本 幸記

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