東京モーターショー2017、海外を唸らせたのはデザイン 効率重視の日本に変化?

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 東京モーターショーが11月5日(日)まで東京・有明のビッグサイトで開催された。トヨタや日産など世界に名を馳せる一流メーカーの出展の様子は、海外のメディアにも大きく取り上げられている。EVや自動運転などの先端技術を搭載したコンセプトカーが披露される中、海外メディアは日本メーカー各社がデザイン重視の傾向に立ち返った点を最も評価しているようだ。

◆自動車業界の未来はデザインにあり 武士や枯山水のコンセプトで訴求
 デトロイト発の業界紙『オートモーティブ・ニュース』の記者は、東京モーターショーを彩る和の感覚に溢れたコンセプトカーに満足した様子だ。展示車両の中から日産のEVコンセプトモデルである「IMx」を取り上げ、日本流のデザインが光ると評する。モダンな外装とは対照的に、インテリアは障子、枯山水、組み木細工から着想を得るなど、スタイリッシュかつ遊び心のあるテイストに仕上がっている。

 インテリアデザインについて、同紙では極めて重要な要素だと捉えているようだ。近年は欧米や韓国などからも多様なラインナップが発売されており、日本ブランドの訴求力が落ちてきているという。日本車を差別化する上で、意匠は欠かせない要素だとのことだ。

 フォーブス誌でも、自動車ライターのピーター・リオン氏による記事の中で、各社のデザインへの注力に注目する。記者の目を引いたのは、マツダが開発したデザインテーマ『Kodo(魂動)』を用いて作られたビジョン・クーぺだ。こちらは日本刀にインスピレーションを得て開発された。障子や刀など、わかりやすい「日本的」なデザインが海外の自動車ファンを唸らせているようだ。

◆テスラを抜いた? 日本製EV車の性能はいかに
 デザイン以外の要素としては、やはり昨今の流行を汲んだEVと自動運転車が会場で脚光を浴びている。カナダ紙グローブ・アンド・メールは、2018年版の日産リーフのコンセプトモデルを取り上げ、EV車として「テスラ・キラー」だと評価する。テスラの大衆モデル「モデル3」と同等の航続距離を確保しながら、値段は約3分の2に抑えてある点は魅力的だ。

 自動運転の分野では、フォーブス誌(10月28日)がレクサスの「LS+」コンセプトカーを紹介している。高速道路上を自動で走行することができ、合流や車線変更などにも対応するとのことだ。自動運転技術自体を「交通事故のない世界の実現を目指す」ものだとしており、この分野への期待は世界的に大きいことが伺える。

◆逆境を切り抜け、日本車の栄光を再び
 かつて日本は自動車の生産台数世界一を誇ったこともあったが、現在は中国が首位になっている。それに大きく水をあけられてアメリカが2位、そして日本が3位となっている。この点についてCNNは、日本は感情より効率性を優先し、感動を呼ぶデザインを開発してこなかったことが一因としている。軽自動車という規格も海外にはないものであり、日本の効率重視の象徴と見られているようだ。

 日本車の魅力が落ちていると指摘するのは、ロイターも同じだ。国内の販売数は2000年から17%も減少しているが、国産車のラインナップに若者の食指が動かないことが原因の一つだと見ている。

 今回のモーターショーでは、コンセプトとはいえ、世界のメディアを唸らせるモデルがひしめく。各社がデザイン重視に舵を切ったのは、一つの吉兆なのかもしれない。日本のトップ企業たちは、国内の若者のみならず世界を魅了するモデルを生み出せるだろうか。

Text by 青葉やまと