日本版GPS衛星「みちびき」、防衛利用も 北朝鮮施設への攻撃能力を海外紙指摘

出典:qzss.go.jp

◆巡航ミサイルのピンポイント誘導に利用か
 英デイリー・エクスプレス紙(電子版)は、ズバリ『日本が北朝鮮のミサイル施設を破壊するためにGPS衛星を打ち上げ』というタイトルで打ち上げのニュースを記事化。「みちびき」によって「北の独裁王朝が設置したミサイル発射施設をピンポイントで割り出し、主要設備を巡航ミサイルで排除することが可能となる」としている。

 エクスプレス紙は「公式に発表された目的は、新ビジネスを支援し、経済成長を後押しするというものだ。しかし、専門家らは、北朝鮮による脅威が増す中、その重要な目的は平壌を監視することだと言っている」としている。同紙は、「World War3(第3次世界大戦)」というカテゴリーを設けて一連の北朝鮮情勢のニュースをまとめているが、この「みちびき」打ち上げの記事もそこに分類されている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、「潜在的に、北朝鮮のミサイル発射施設を破壊する能力を飛躍させる狙いがある」と、「みちびき」について報じている。

「みちびき」のシステムが単独で運用可能になるまでには、数年を要するという。それまではアメリカのGPSシステムの協力を得て運用される(WSJ)。一部では年内の開戦もささやかれる北朝鮮情勢だが、数年を待たずとも米国との共同作戦という形で「みちびき」のシステムが軍事利用されることがあるかもしれない。

◆電波妨害機能も搭載
「みちびき」には、高度な電波妨害機能も搭載されているという。有事の際には北朝鮮のレーダー網や通信網を無力化することができ、さらにその発する信号も高度に暗号化されているため敵の妨害攻撃に対する防御力も非常に高いとされる。「平壌によるあらゆる電波妨害の試みにも影響されない」と、エクスプレス紙は書く。

 北朝鮮は実際に、近年繰り返し韓国に向けてGPSの妨害電波を発信し、航空機や船舶の運行にも大きな影響が出ている。日本も朝鮮半島有事を見据えて、これに対抗する能力を「みちびき」に与えたということのようだ。

 WSJの見方はもう少し冷静だ。同紙もやはり「みちびき」の軍事的な能力の高さを指摘しているものの、「最も大きな恩恵を受けるのは自動運転車の開発ではないだろうか」としている。同紙は、欧州、インド、中国もそれぞれのGPS衛星を開発していることにも触れている。民間利用と軍事利用の両方で衛星による技術革新を見据えているのは、日本だけではないようだ。

Text by 内村 浩介