読んでも読まなくても痛い目に合う?オンライン利用規約の問題点と解決策

panuwat phimpha / Shutterstock.com

著:David Tuffleyグリフィス大学 Senior Lecturer in Applied Ethics and Socio-Technical Studies)

 新しいアプリやソフトをダウンロードしたり新しいサービスに登録したりする際、オンラインで幾度となく目にするこのメッセージ。

 利用規約に同意いただける場合、[同意する]をクリックしてください。

 いつものように何気なくクリックしてから、自分が同意したのは将来生まれる第一子を手放すことや1000時間公衆トイレを掃除することだったと気付く――。

 これは、イギリスで無料Wi-Fiに申し込んだ2万人以上の人々が実際に体験した出来事だ。彼らは、「公衆トイレを掃除する」「野良犬を抱きしめる」「カタツムリの存在を目立たせるために殻に色を塗る」といった契約を含む利用規約に同意したのだ

 幸い、この騒動を仕掛けたWi-FiプロバイダのPurple(パープル)によると、この「社会奉仕契約」を実行する予定はないという。

 しかし、パープルの狙いはほかにある。気付くユーザーがいるか確かめるため、2週間限定でこのふざけた項目を利用規約に付け加えたという同社は、声明で次のように述べている。

 当社がこの実験行った真の目的は、無料Wi-Fiの利用登録時に消費者意識が欠如しているという事実を明らかにすることです。

 疑わしい項目に異議を唱えると賞金がもらえるチャンスが全ユーザーにありましたが、驚くべきことに、2週間でそのことに気付いたのは、全ユーザーの0.000045パーセントにあたる、たったひとりだけでした。

◆消費者意識を持ちたいけれど……
 今すぐ無料オンラインサービスやソフトを利用したいとき、私たちはろくに内容も読まずに躊躇なく利用規約に同意する。そして、サービスプロバイダは、私たちにその内容を簡単には教えてくれない。

 ショッピングセンター、カフェ、レストラン、ホテル、バーなどの公共のWi-Fiスポットで簡単に無料Wi-Fi接続に同意してしまう人たちにとって、これは懸案事項だ。オーストラリア通信メディア庁(Australian Communications and Media Authority)によると、2015年6月30日の時点で、オーストラリアでは約423万人が無料または有料の公共のWi-Fiスポットを利用しているという。

 他のソフトや拡張機能とセットになっていることもある無料ソフトやアプリ、いわゆる不審なプログラム(Potentially Unwanted Programsのダウンロード時にも、同じことが言える。利用規約を読まなければ、何をインストールしようとしているのかわからないのだから。

 先日のパープルの一件は、長年私たちが警告してきたこの問題をいまだに人々が理解していないことを示している。

 今年の初め、消費者団体Choice(チョイス)が、消費者は使用許諾契約、利用規約、諸条件を読まないという問題を提起した

 アマゾンの電子書籍リーダーKindle Voyageを例に挙げ、機器を購入する際に最低8種の文書を読んで同意しなければならず、購読サービスを利用する際にも文書を読まなければならないとしている。

 チョイスによると、合計7万3000語以上になる文書は、読むのに9時間近くかかるそうだ。俳優が全文を朗読する動画をチョイスが制作したが、こちらには要約版がある。

◆読みたくても読めない――オンライン利用規約の問題点
 大多数の技術系企業が合法的に営業を行っているが、倫理的に正しくないとまではいかずとも、本当にインフォームド・コンセントを得るためのプロセスには問題が残っている。現時点では、利用規約を構成する多くの言葉の底に何があろうとも、[同意する]をクリックすれば同意したものとみなされる。

 イギリスで行われたある調査によると、オンラインサービスや製品に登録する際に注意を払って利用規約を読む人はわずか7パーセントだった。

 この手の文書は法律用語で書かれるのが常で、法律の専門家でなければ正しく理解するのは難しい。にもかかわらず、チェックボックスをクリックするだけで、法的な同意を得たとみなされてしまうのだ。

 同じ調査によると、5人に1人が利用規約を注意深く読まずに同意して損害を被ったことがあるとわかっている。10人に1人は、契約の細字部分を読まなかったために予想より長い期間契約に縛られたことがあるという。

 「長々しくあまりにも複雑な規約」は公平を欠くものであるとチョイスは考えており、そのような規約から人々を守るため、オーストラリア消費者法(Australian Consumer Law: ACL)の改正を求めている

◆ユーザーとプロバイダ双方のための解決策とは
 何十億ドルもの金額が絡んでいるのだから、IT企業は自社の製品やサービスを利用することによって生じる結果を、あらゆる危険性を含めてより明確にする必要がある。

 ユーザーが本心から同意してくれれば、双方にとってプラスになる。

 例えば、あるオンライン製品が個人情報を利用できるとする規約に、その情報が何かを含めて承知の上で同意すれば、ライフスタイルに合致した有用なターゲティング広告を受け取れるだろう。

 では、製品やサービスを利用することによって生じる結果を人々にわかりやすい言葉で適切に伝えるにはどうすればいいだろうか。

 既に効果をあげている解決策のひとつに、Creative Commons(クリエイティブ・コモンズ)がライセンス条件に取り入れている読みやすい要約がある。条件を基本的な内容にまで分解し、特筆すべき箇所を強調するという方法を取っている。

 これはプロバイダにとって難しいことではないし、隠し事がなければ、ユーザーを脅かすこともないだろう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Naoko Nozawa

The Conversation

Text by THE CONVERSATION

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