自動車産業は歴史的なディスラプションに直面 — ローランド・ベルガーが読み解く非連続変化

 ストラテジーコンサルティングファームのローランド・ベルガーは、自動車産業を対象とした調査「Automotive Disruption Radar」(=自動車産業で起きる非連続な変化を読み解く)をリリースした。

 主な調査結果は以下の通りだ。
・自動車関連産業は、歴史的なディスラプションに直面している
・自動運転と電気自動車は広く支持を得ている
・自動運転が実用化されれば、自家用車の購入を控える消費者は全世界で46パーセントに達する:オランダ(59%)、日本(56%)、シンガポール(51%)
・37パーセントの消費者は「電気自動車を魅力的な選択肢」として考えている:中国(60%)、韓国(54%)、日本(22%)

◆目の前に迫る自動車産業のディスラプション
 デジタルは自動車産業にカーシェアリングやライドシェアなどのモビリティ・サービスを促し、インターネットによる販売など新たな販売チャネルも拡大させている。電気自動車の市場が急拡大するだけでなく、自動運転の急速な進歩も止まる気配がない。

 もし消費者が真に望む産業像があるならば、自動運転と電気自動車のどちらかが大きく成長するのだろうか。アンケート結果によると、46%の消費者はロボットタクシーが自由に低価格で利用できれば、「今後は自家用車を購入しない」と回答している。また、37%の消費者は次の自家用車の購入の際に電気自動車を検討していることが明らかになった。

 ローランド・ベルガーのグローバル・オートモーティブ・コンピテンスを率いるマーカス・ベレット氏は、「自動車産業はディスラプティブな傾向を受け、あらゆる変化に対し同時に対応することが求められており、過去130年間で最大の変革期に直面している。」 と述べている。

◆アジアで顕著化する、新しいモビリティの考え方
 世界的には、シンガポールと中国の消費者が新たなモビリティに最も大きな関心を示している。シンガポールの84%、中国の83%の回答者は「自動車を購入せずシェアリングで移動している人を、1人は知っている」と答えている。一方、他の先進国では、カーシェアリングやライドシェアのモデルに積極的な回答をした消費者は少ない。イギリス(37%)、フランス(34%)、日本(29%)、そして米国(22%)が最下位となった。

 また、「自家用車を購入せずに、ロボットタクシーを利用してもよい」と回答した消費者は特に人口密度の高い都市を有する国に多い。オランダ59%、日本56%、シンガポール51%の順だ。一方、国土の広い国が消極的な傾向を示している。米国35%、インド33%、中国27%という結果であった。

 こうした新しいモビリティへの関心の高まりについて、ローランド・ベルガーのパートナー、ウォルフガング・ベルンハルト氏は「新たなビジネスモデルが成長し、ロボットタクシーのような低コストの代替手段が確立されれば、この傾向は今後数年で大幅に加速すると考えられる。」と述べている。加えて「自動運転・電気自動車は2021年から市場に投入されると予測されている。自動車メーカーはサプライヤーやIT企業などと協力し、この分野での競争力獲得に向けた多大な努力を重ねている。現在、新たなモビリティサービスや自動運転分野に従事している労働者は、全世界で約4万人相当に達する。」と指摘している。

◆電気自動車に対する期待が最も高い中国
 地域格差が顕著な分野のひとつはEVやPHEVを含む「E-モビリティ」である。中国の消費者はEVに対する高い購買意欲を示しており、60%が次の自家用車としてEVの購入を検討している。韓国でも54%と回答者の半数以上がEV購入を検討している。

 日本、韓国、欧州、米国の消費者は電気自動車購入の際にネックとなるのは値段だと答えている。日本の消費者で、次に電気自動車の購入を検討すると応えた回答者は22%に過ぎない。

 「バッテリー技術の進化により走行距離が伸び、結果的に利便性も向上した。電気自動車に必要な高いエネルギー密度のリチウムイオン電池に代表される電池のコストは2020年までに1キロワットあたり約120ユーロまで下がると想定され、初期モデル時のバッテリーコストの3分の1に相当する。」とベルンハルト氏は指摘する。

◆終焉を迎えつつある従来の自動車産業
 「このような進化は、従来の自動車産業が一つの時代を終えつつあることを示唆している。消費者は新しいモビリティ、自動運転を初めとするさまざまな変化に期待を抱いている。この動きが新たなビジネスモデルの成長を後押ししている。企業はあらゆる変化に対しバランスを取りつつ対応することを求められている。自動車メーカーとサプライヤーは共にディスラプションに適応し、新たな可能性を模索することが求められる。一方で、既存のインフラから脱却するだけでなく、変革プロセスに積極的に取り組むことも必要となる。これこそが市場のプレーヤーにとって最大の挑戦といえるだろう。」とべレット氏は結論付けた。

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調査概要:新しいモビリティの考え方や自動運転、相互接続性、デジタルサービス、電動化など、ディスラプティブ(「破壊的」、「破壊的な」、「非連続な変化」という意味)な産業変化と影響度を定期的に調査することを目的に、消費者、規制、テクノロジー、インフラストラクチャ、産業活動から成る5分野で25のディスラプション状況を分析している。世界の主要10カ国(中国、ドイツ、フランス、イギリス、インド、日本、オランダ、シンガポール、韓国、米国)、1万人以上の消費者へのアンケートが定期的に実施されるという。

photo via CC0 Public Domain

Text by 酒田宗一

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