熱波の欧州で山火事が拡大 焼失面積は平年の約2倍、大気汚染も深刻化
フランス・ボルドー郊外で山火事の消火にあたる消防隊員(7月27日)|Emma Da Silva / AP Photo
熱波の到来による未曽有の猛暑にあえぐ西ヨーロッパ。欧州の暑さは、日本の蒸し暑さとは異なり、鉄板の上で焼かれるようなカラカラの暑さだ。今年は早い時期から干ばつによる森林火災が危惧されていたが、その懸念は現実となり、各地で火災が相次いでいる。焼失面積も記録的な規模に達した。
◆増加する焼失面積
欧州森林火災情報システム(EFFIS)によると、欧州全体では7月22日時点で、年初から25万4388ヘクタールが焼失した。これは、過去20年間の同時期の平均13万8242ヘクタールのほぼ2倍である。
EFFISの統計は人工衛星画像の解析に基づき、原則として30ヘクタール未満の火災は集計対象に含まれない。そのため、小規模な火災や進行中の現場からの報告を含む各国当局の集計とは、数字が大きく異なることがある。
◆首都周辺でも大規模火災が続くスペイン
欧州の中でも、今年は猛暑の影響を特に強く、しかも長期間受けているスペインなど欧州南西部で、森林火災が深刻化している。EFFISによると、昨年、近代史上最悪となる39万3000ヘクタールを焼失したスペインでは、今年もすでに約13万ヘクタールが火災で焼失している。
だが、スペイン当局の発表では、被害はさらに大きい。26日、火災現場近くを視察したサラ・アーゲセン第3副首相兼環境移行相は、今年はすでに全国で15万3000ヘクタールが火災の被害を受けていると述べた。アーゲセン氏によると、これは非常に厳しい状況だった2025年の同時期の6倍に相当するという。
現在は特に、マドリード州と東部バレンシア州で大規模な火災が進行しており、マドリード州で約6万人、バレンシア州で約1万5000人の計7万5000人が避難を余儀なくされている。
◆火災が頻発するイタリア
イタリアでも同様に火災が頻発している。ロピニオン紙によると、シチリア島では、40度を超える気温と強風のなか、7月22日から24日にかけて300件以上の森林火災が発生した。消防隊員ら6000人が消火活動にあたったが、24日時点でも約50件が燃え続けていた。消火活動中には消防士1人が死亡している。
イタリアでは、22日時点で年初から全国で6万3000ヘクタールが焼失した。これは、過去20年間の同時期の平均焼失面積2万ヘクタールの3倍以上だ。ただし、同時期の過去最多は7万1000ヘクタールで、2026年が過去最多というわけではない。
◆発生からまもなく1週間 フランス・ボルドーの火災
EFFISの発表によると、フランスでは2026年の年初から7月25日までに、6万9473ヘクタールが焼失した。これまで最悪だった2022年の約6万6300ヘクタールを、年の途中ですでに上回っている。7月だけで見ても、観測が始まった2006年以降で最悪の水準となった。(ル・フィガロ紙、BFM TV)
だが、フランス当局の集計では、火災が及んだ面積はさらに大きい。26日、ローラン・ニュネズ内相は、年初から火災が及んだ面積が11万5000ヘクタールに達したと発表した。
特に現在注目されているのが、7月22日に発生したフランス南西部ジロンド県の火災だ。フランス南西部を代表する地方都市ボルドーに迫る勢いで燃え広がり、すでに4万2000ヘクタールを焼き、約22万人が避難している。
現在、消防士2500人、兵士1500人、警察官と憲兵約1200人が動員されている。火はボルドー都市圏まであと15キロという地点に迫っている。延焼を何とか食い止めようと懸命の消火活動が続けられているほか、数千本の木を伐採して防火帯をつくる作業も急ピッチで進められている。(ランデパンダン紙、フランス・アンフォ)
◆森林火災の約9割は人為的原因
フランス・アンフォが2022年に報じた憲兵隊の資料によると、フランスでは、森林火災の出火原因の約9割が人為的なものとされている。ただし、そのうち放火によるものは約10%にすぎず、多くは不注意や過失によるものだ。
例えば、たばこのポイ捨てやバーベキュー、花火などの火の不始末が挙げられる。また、干ばつによって植物が乾燥している時期には、機械から出た小さな火花が大規模な火災につながることもある。
前述のジロンド県の大規模火災については、原因は現在も調査中だが、送電線周辺の清掃作業で使用されていた下草刈り機が出火原因となった可能性が高いと、ボルドーの検察官が27日に説明している。事故による出火の可能性が重視されており、作業員らは当時の規制に違反していなかったとみられている。
◆深刻な大気汚染の広がり
大規模火災による大気汚染も深刻だ。ジロンド県があるヌーヴェル・アキテーヌ地域圏では、26日時点で、ジロンド県、ランド県、ドルドーニュ県、ロット・エ・ガロンヌ県の4県で、大気中の粒子状物質(PM10)が警戒基準値を超えたと、同地域圏保健局(ARS)の副局長が発表した。
火災の煙は、すでに遠く離れた地域にも到達している。ル・フィガロ紙によると、ボルドーから500キロ以上離れたリヨンでも空がかすみ、煙の臭いが感じられるようになった。リヨンの大気監視機関は大気の悪化を報告し、地域西部全域に大気汚染の警戒情報を出した。
インタビューを受けるボルドーの住民や、火災現場からリポートする報道関係者にも、マスクを着けたままの人が増えている。画面に映るピンクがかった灰色の空と相まって、大気汚染の深刻さを感じさせる。
今日28日午後には、再び熱波がフランスに到達するとみられている。気温の上昇に加え、降雨を伴わない雷や強風により、火災と大気汚染がさらに悪化することが危惧されている。




