フランスで「エアコン論争」勃発 記録的熱波で「エアコン=悪」に異論
パリの街並みを背景に扇子で涼を取る女性(6月23日)|John Leicester / AP Photo
6月後半の記録的熱波で、フランスでは各地で気温が40度前後まで上がり、1000人の超過死亡が報告された。これまでフランス人は環境を悪化させるとして、エアコンの使用に懐疑的だったが、夏場の高温が常態化した今、長年にわたる考え方の見直しを余儀なくされている。
◆暑すぎる……フランス社会大混乱
6月20日ごろから始まった熱波で、フランスでは各地で猛烈な暑さとなり、気温が40度を突破した。なかには最高気温が44度近くに達した場所もあった。フランス気象局の暫定値では、6月23日の国内平均気温は30度近くに達し、観測史上最も暑い日となった。(CNN)
この暑さで、エッフェル塔やルーブル美術館が閉館に追い込まれ、学校でも休校や時短が相次いだ。ロイターによれば、これまでですでに1000人の超過死亡が報告されたという。大半は高齢者で、介護施設や一般家庭での死亡に関する詳細な情報が明らかになれば、その数はさらに増加すると見込まれている。
◆環境に悪い、無駄! 刷り込まれたエアコンのイメージ
夏場の極端な高温は、アメリカやオーストラリア、アジアの多くの地域でも経験される。しかし、エアコンの普及率がフランスなど欧州との大きな違いを生んでいる。BBCによれば、エアコンを設置している世帯はアメリカや日本では90%に達しているが、フランスではわずか25%だ。学校や病院でも設置は稀だという。
米ビジネス・インサイダー(BI)によると、フランスでこれまでエアコンが普及しなかったのには、いくつかの理由がある。その一つが、エアコンに否定的なフランス人の考え方だ。6月に行われたイプソスの調査では、フランスでは78%が、エアコンは環境にやさしくないと答えている。そもそも以前は今ほど夏場に気温が上がることがなく、フランスを含む欧州の多くの地域では、建物は熱を逃がすのではなく、むしろ冬の間に熱を保持するように設計されてきた。多くの人は比較的涼しい夏を過ごしてきたことから、エアコンはホテルやオフィスのため、観光客のためのもので、不要、無駄と捉えられてきた。
コストも理由の一つとして挙げられている。一般家庭では、たまにしか使わない冷房システムに数千ユーロ払うぐらいなら、数週間暑さを我慢するほうが合理的だと考えられてきたという。また、多くの住宅はエアコンが存在しなかった古い時代に建てられているため、設置に際し高額な改修工事が必要となる場合がある。さらに、家主の許可、古い建物を保存するための規則の順守といった制度面のハードルもある。
◆政争の具にされた? エアコン論争勃発
エアコン嫌いだったフランスだが、気温が40度に迫るなか、ポータブルエアコンの購入が急増している。BBCによれば、子供を数時間だけでも授業に出したい家庭や、蒸し暑い集合住宅で夜をしのぎたい住民らが購入に走っているという。
さらに、英フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)によると、エアコンを使うか使わないかが、フランスの「文化戦争」における新たな争点となっており、政治家、科学者、環境保護活動家らが、気候変動を抑制し、気温上昇による差し迫った影響を緩和する方法について対立する事態を生んでいる。
極右政党「国民連合」の有力者、マリーヌ・ルペン氏は、マクロン大統領やEUのグリーン政策は行き過ぎだと主張。左派や環境活動家たちが公衆衛生を犠牲にしてエアコン反対のイデオロギーに固執していると非難し、「私が大統領に選出されれば、大規模なエアコン導入計画を、病院、介護施設、学校など、最も弱い人々が利用する場所から進めていくつもりだ」と述べた。これに対し、対立する極左のジャンリュック・メランション氏は「絶対にあり得ない」と反発している。(FT)
気候学者のクリストフ・カスー氏は、選挙戦における気候変動を巡る議論が単なる「エアコンに対する賛否」という単純な議論に矮小化されることを懸念していると述べ、重要な課題を政争の具にすべきではないと苦言を呈している。(AFP通信)




