「健康的な空気」は7ヶ国のみ 2023年世界大気汚染レポート

インド・ニューデリーのインド門(2023年11月)|PradeepGaurs / Shutterstock.com

◆旅行者の呼吸器系に影響も
 気候危機が、世界中の何十億もの人々の健康を脅かしている大気環境の悪化に極めて大きく関連している。

 英医学専門誌BMJに昨年11月に掲載された研究によると、化石燃料による大気汚染で、毎年世界で510万人が死亡している。一方、WHOによれば、環境大気汚染と家庭大気汚染の複合的な影響により、年間670万人が死亡している。

 IQエア・グローバルのCEOフランク・ハメス氏は「PM2.5は皮膚の奥の細胞から肺や脳の細胞まで、私たちの体のあらゆる細胞に浸透しているのです」(NBCニュース)、その結果、「大気汚染が最も深刻な国の一部では、人々の寿命が3年から6年も縮んでしまったのです」(CNN)と述べる。

 大気汚染が旅行者に与える影響については調査されていない。2021年の研究では、海外旅行者の大気汚染暴露が健康に悪影響を及ぼすことが判明したが、健康は帰国後に回復すると考えられている。2019年の別の研究では、健康な成人の旅行による大気汚染への暴露が、呼吸器系の健康状態に変化をもたらすという結果も出ている。

 海外旅行を計画するときに、どこがどれだけ大気汚染されているかを考えることはあまりないが、この結果によって、一般的に人気の海外旅行先を検討し直す必要があるかもしれない。

Text by 中沢弘子