欧州でオオカミ増加、懸念高まる 保護基準見直しも

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 近年、日本ではクマによる被害やイノシシの市街地での出現が増えているが、欧州ではオオカミによる被害が増加している。

◆ヒトの駆逐により急激に減少したオオカミ
 欧州に広く生息していたオオカミだが、ヒトに駆逐され、19世紀半ばには西ヨーロッパのほとんどの地域から姿を消したとみられていた。フランスでは、狂犬病撲滅政策を推進し、それに伴い屠殺を奨励したことから、オオカミは劇的に減少した(プール・ラ・シアンス誌)。

 その後、野生動物の絶滅を危惧する意識が高まり、欧州委員会は1992年に自然生息地および野生動植物種の保全に関する指針を発表。オオカミは保護種に指定された。

◆オオカミの再来
 そのころから、人々の意識の変化と呼応するように、各国ではオオカミの目撃情報が次第に増加。欧州内におけるオオカミの個体数は増加傾向に入った。

 フランスでは過去40年足らずのうちに、国内に生息するオオカミの推定数は、約50頭から1100頭を超えるまでに増加した。生息地も広くなり、いまでは国内半分以上の県(55県)で観察されている。過去5年で107%増加した。(環境連帯移行省

 2022年に国内のオオカミの個体数を3300と見積もっていたイタリアでもオオカミは増加している。アルプスに生息すると見積もられているオオカミの数は300頭だが、これは5年前の3倍だという。

Text by 冠ゆき