水をめぐり世界各地で「軋轢」 国際河川のダム問題、欧州の砂漠化リスク

ひび割れた土が露出したスペイン・カタルーニャ州のサウ貯水池(4月18日)|Emilio Morenatti / AP Photo

◆砂漠化するスペイン
 昨年干ばつに苦しんだ欧州では、多くの地域が地下水枯渇の危機を味わった。その後の秋冬春の降雨にもかかわらず、いまだ地下が十分に潤っていない地域は多い。スペインのカタルーニャ州とアンダルシア州では、4月の段階で貯水池の水量が25%未満を記録した。そのためこの2州では、2月末から庭の水やりやプールの水張りが禁止され、農業用灌漑(かんがい)も制限されている。ほかの地域でも多くは利用可能な水の量が40%を下回る危機的状況だ。(フランス24、5/4)

 スペインは農産物の大部分を近隣諸国へ輸出しており、「ヨーロッパの菜園」とも呼ばれる。同国の農業は国内の淡水消費量の80%を占めており、現在の大干ばつによりこの夏秋の不作は確実と見られている。水不足に備え、スペインは1950年代から多くのダムを建設してきたが、かえってこれが地下水の乱用を誘発した感もあり、現在は「領土の75%が砂漠化過程にある」と国連が警告を発するほどの状況となっている。(同)

◆フランスでは水をめぐるさまざまな論争
 昨夏から地下水量が回復していない地域があるのはフランスも同様だ。同国では、昨年700の自治体が飲料水不足に陥ったが、今年はその2~3倍の自治体で問題となると見られている(レ・ゼコ―紙、5/28)。これを受け、すでに5月頭には20の県でプールの水張りが禁止(アクチュ紙、5/9)。地域によってはプールの販売自体も禁止になっている(cnews、5/10)。

 南仏の自治体のなかには、人口を増やさないため、新規建築許可の今後5年間の凍結を決めたところもある。それだけ飲料水が足りないのだ。フランス南部は伝統的に夏季のバカンスに観光客が集中する地域でもあり、誰にどこまで節水を求めるのかも頭の痛い問題だ。

 フランス南東部のホテル・レストラン連盟のアビシラ副会長は、節水は地元住民の責任となるもので、観光客に押しつけられるものではないと考えているが、住民やエコロジストはこれに強く反駁している(ニース・マタン紙、4/29)。かと思えば、フランス南西部の観光業者らは、メディアが干ばつを強調して報道することで観光客が来なくなるのではないかと危惧する。同地方の観光業会長サナック氏によれば、同地方では観光業関連の水消費量はわずか2%であるのに対し、観光業がもたらす経済的利益は40%という高さだという(ラ・デペシェ紙、5/19)。

 地球上の水の大部分は海水で、淡水は約2.5%とされる。その大半は、氷や氷河として存在しており、地下水や河川や湖沼などにある淡水の量は地球全体の水の約0.8%に過ぎない。その重要さから「青い金」とも呼ばれることのある水。近い未来、この金をめぐる紛争が起きないことを祈りたい。

Text by 冠ゆき