「健康的な空気」は13ヶ国・地域のみ 2022年世界大気汚染レポート

パキスタンのラホール(2021年12月2日)|A M Syed / Shutterstock.com

◆世界8ヶ国 WHO基準値の10倍以上
 世界保健機関(WHO)は、大気中の微小粒子状物質「PM2.5」の許容濃度を、1立方メートルあたり年間平均5マイクログラムとするよう指針を出している。

 IQエアの測定値がWHOの基準を満たした国と地域は、オーストラリア、エストニア、フィンランド、カリブ海のグレナダ、アイスランド、ニュージーランドの6ヶ国、グアムを含む太平洋諸国とプエルトリコを含むカリブ海諸国の7領域となった。

 一方、WHOの基準値の10倍以上となった国は、チャド89.7マイクログラム(以下単位略)、イラク80.1、パキスタン70.9、バーレーン66.6、バングラデシュ65.8、ブルキナファソ63.0、クウェート55.8、インド53.3の8ヶ国となった。

 数十年間大気汚染ワーストランキング入りしていた中国は、2022年に大気質が改善し、本土524都市のうち約64パーセントがPM2.5の年間平均値に減少が見られた。しかし、石炭を継続的に使用していることが気候と環境への大きな懸念材料となり、どの都市もWHOの基準を満たさなかった。

 都市別に見ると、パキスタンのラホール97.4、中国のホータン94.3、インドのビワディ92.7、同じくインドのデリー92.6となった。大気汚染が最も深刻な都市を抱えるインドとパキスタンは中央・南アジア地域においてAQIが最も悪く、人口のおよそ6割がWHOの推奨レベルの7倍以上の地域に住んでいる。

 アフリカ、南米、中東の発展途上国では、観測所があまり設置されていないためデータが不足しており、同報告書に偏りがある点は否めない。たとえば、アフリカの54諸国のうち、19ヶ国しかデータが集まらない。IQエア北米支社のCEOグロリー・ドルフィン・ハンメス氏は「世界のどの国や都市の大気汚染が深刻な状況にあるかを正確に測定するには、さらに多くのデータが必要なのです」と説明する(CNN、3/14)。

Text by 中沢弘子