これまでの寿司は食べられなくなる? 海水温上昇で起きている異変
◆気候変動が海を変えた 資源保護でも回復難しく
令和3年度の水産白書は、近年サケ、サンマ、スルメイカの不漁が続いているとし、原因の一つとして海水温や海流などの海洋環境の変化をあげている。持続可能な水産物に関する取り組みをサポートする、シーフード・レガシーの山内愛子副社長は、日本人の好きな魚の漁獲量は2014年から急減しており、ほかの魚種も同様に取れなくなる可能性があると述べる。そうなれば、日本の漁業にとって深刻なダメージになると懸念を示した。(ガーディアン紙)
東京大学大気海洋研究所の伊藤進一教授によれば、ブリやサワラなどの一部の魚種は、通常とは異なる場所で見つかるようになった。これらは10年前に今より北で取れていた魚種であり、気候変動の影響によると見られるという。魚だけでなく北海道の昆布や東京湾の海苔なども危機にさらされているとしている。(同)
同様の現象は他国でも見られる。アメリカでは水温の上昇で、従来の漁場で取れるヒラメ、カニ、タラなどの魚が減少しているという。資源保護のため商業漁業を停止した魚種でさえも、個体数が十分に回復しないものも多い。魚種を管理しても、完全に再生させることは不可能かもしれないと研究者は指摘している。(AP)
◆食文化も変わる? 数年後には消える魚も
海水温が変われば今いる魚たちは消え、これまで取れなかった魚が増えることを意味すると伊藤教授は指摘し、必然的に日本人の食生活に影響を与えるだろうと述べる。グリーンピース・ジャパン元事務局長の星川淳氏も、ほとんどの日本人が自分たちの食べている魚介類の微妙な変化に気づいていないが、今後数年のうちに状況は変わっていくだろうと話している。(ガーディアン紙)
ちなみに魚だけでなく、寿司に使われるワサビも気候変動の影響を受けているという。ワサビは狭い谷間の沢沿いで栽培され、厳しい気候に弱い。地球温暖化によって暴風雨や台風の頻度と強度が増し、気温が上昇することでワサビの供給が不安定になっているとロイターは解説している。特に生わさびの入手は困難になっており、寿司や刺身といった伝統的な日本料理の危機につながるのではないかとしている。
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