500年で最悪の干ばつ、欧州に何をもたらしているのか

フランス・サンマーニュ近郊で発生した山火事(8月12日)|SDIS 33 via AP

◆頻発する山火事の深刻化
 水不足のせいで、今夏のヨーロッパでは夏真っ盛りの8月に、枯れ葉の舞う不思議な景色がそこここで見られる。この乾燥は欧州で近年増えている山火事をさらに深刻なものにしている。欧州森林火災情報システム(EFFIS)のデータによれば、8月18日の時点で、欧州全体ですでに76万1547ヘクタールの森が燃え尽きた計算だ。これはスイスとベルギーを合わせた面積よりも広い。EFFISによれば、同システムが設立された2006年以来、最悪の記録の一つだ。(ユーロニュース、8/21)

◆停滞する物流
 ドナウ川、ライン川をはじめ、川や湖の水位も軒並み低下している。なかでもライン川は、フランス、ドイツ、ベネルクスを結ぶ主要物流ラインでもあるため、その影響は経済的にも大きい。水位の低下により船の航行が難しくなり、その数は激減したからだ。たとえば、フランスのメス港からは、毎年ドイツやベネルクスに向けて200万トン以上の穀物がモーゼル川からライン川を経て船で輸送されるが、今夏は収穫が終わっても送り出せない穀物が山積みになっている。稀に船が出る場合でも、川底に船体が触れないように、積めるのは900トンに限られており、通常の3分の1以下だ。足りない分を陸路で運ぶにも、船1隻の運搬量はトラック60台分に匹敵し、簡単に変更できるものではない。(フランス・アンフォ、8/14)

◆火力・原子力発電の問題にも
 また、ロシアとのガス問題を契機に、火力発電に力を入れざるを得なくなっていたドイツは、石炭もライン川で運んでいた。その一方で、ライン川の運送費は、前述の状況を受け、急激に値上がりしており、水不足はドイツの電力問題にもつながっている。

 発電の70%以上を原子力発電に頼るフランスでも、水不足と猛暑の影響で電力生産量の削減を余儀なくされている。原子力発電所で冷却に用いる川の水が減少し、その温度も高すぎるためだ。(リベラシオン紙、8/5)

Text by 冠ゆき