専用容器で販売、収集・洗浄 Loopが挑む循環ショッピングシステム

North America Public Relations via AP

 アイスクリームのステンレス容器から、液体石鹸を入れるガラス瓶にいたるまで、世界中のスーパーやレストランで、再利用可能なパッケージの使用がますます加速している。

 再利用可能なパッケージの収集と洗浄消毒を手がけるLoop(ループ)社は、2年前に設立された。9月22日の同社の発表によると、フランスと日本のスーパーでの試験販売が成功に終わり、その後、事業を拡大中だという。アメリカのクローガーとウォルグリーン、イギリスのテスコ、オーストラリアのウールワースといったスーパーマーケットの各チェーンがLoopと提携して一般家庭用の定番商品を再利用可能なパッケージで販売しており、ほかにもマクドナルド、バーガーキング、ティムホートンズが同社と契約を結んでいる。

North America Public Relations via AP

 Loopによると、同社の提携店舗は2020年末の時点ではパリの12店舗のみだったが、2022年の第1四半期までには、世界各地の191の店舗やレストランにて再利用可能なパッケージでの製品販売を行う計画だという。

 提携するスーパーには、Loop専用のコーナーが設けられる。そこでは個別のブランドからネスレのような総合大手メーカーまでもが、食料品や家庭向け掃除用品などの商品を再利用可能な容器に詰めて販売を行う。2022年初めまでには世界各国150以上のメーカーが参入し、375の製品を販売する見通しだ。

 顧客の側は、商品価格にデポジットを上乗せした価格を店頭で支払う。デポジットの価格には幅があり、コカ・コーラの瓶1本につき15セント、クロロックスのクリーニングワイプは、ステンレス容器1本につき10ドルだ。使用済み容器を店まで返品すると、顧客はLoopのアプリを通してデポジットの払い戻しを受けられる。Loop側はそれらの容器の収集と洗浄を行い、メーカーに返送。そこで新たな補充が行われる。

 ニューヨークにあるバーガーキングの一部店舗や、カナダのトロントにあるティムホートンズ、イギリスのマクドナルドなどのファストフード店も、丈夫で再利用可能なプラスチック製コーヒーカップやサンドイッチホルダーなどの使用と回収を進める予定だ。

 ミシガン州立大学パッケージング(包装)学科の支援コーディネーター兼インストラクターを務めるシンバリー・ウィア氏によると、再利用可能なパッケージへの取り組みは、自動車業界など一部の業界ではすでに十分に進んでいる。しかし消費者向け製品の分野でこれを試みるのは、Loopが最初ではないかと同氏はみている。

 ウィア氏は、「実際に製品の容器を返却する責任を負うのは、私たち消費者です。この新たな仕組みの下では、私たち市民の側が日常的に果たす役割が以前にも増して大きくなります」と話す。

 Loop独自の取り組み以外にも、パッケージの無駄をなくすために現在実施されている取り組みは数多い。たとえばレゴは昨年、同社が販売する商品にプラスチックのパッケージを使用しないと発表した。コカ・コーラ、ペプシコ、キューリグ・ドクターペッパーの飲料各社は、ペットボトルのリサイクルと再生処理を向上させるため、多額の資金を投資してきた。またアマゾンは、従来よりも簡素な梱包での商品発送を利用者に推奨している。2015年以降、同社は100万トンの梱包材を削減したという。

 Loopは、ニュージャージー州に本社を置くリサイクル企業「テラサイクル」の一部門だ。テラサイクルの設立者でCEOを務めるトム・ザッキー氏によると、Loopのコンセプトは、実は過去の時代にもあったものだ。1950年代より前の時代には、さまざまな製品が長い商品寿命を持つよう設計されていた。しかしその後の数十年で、製品価格が下がるに従い、作りもどんどん脆弱になっていったのだという。

 同氏は、「そしていまは、その傾向が最も顕著になった時代です。しかし消費者の側は、そのトレンドにうんざりしているのです。より良い品質、より良い素材を追求するというアイデアに、人々は大きな魅力を感じています」と述べている。

 クリス・クリチェット氏(66)は、9月末にイギリスのミルトンケインズにあるテスコの店舗を訪れ、Loopのコーナーを見ていた。同氏は、「私が若い頃にも、レモネードのボトルをこうやって回収していた記憶があります。人々がそれを実行に移せるよう、買い物のシステム自体にそれを組み入れるのは、とても良いアイデアだと思いますよ」と話す。

 ザッキー氏によれば、商品購入から60日以内にパッケージの約80%が回収されていることをLoopは確認している。また、一部の消費者がパッケージを自分の手元に置いて再利用している可能性も指摘した。

 Loopは、事業を行うすべての国において専用の洗浄施設を持ち、未洗浄パッケージの保管のためのより小規模な施設も確保している。もちろん、あらゆる資材の輸送過程で環境負荷が生じることは事実だ。しかし容器を数十回再利用する方式は、新たなパッケージの製造のために毎回地球の資源を使う方式に比べ、環境負荷は低くなるという。

 Loopは提携企業に料金を請求し、そこから資金を調達している。現時点ではまだ利益が出ていないが、2年以内には利益が出るだろうとザッキー氏は予測する。

 アメリカのスーパーマーケット最大手、クローガーのチーフ・インパクト・オフィサーを務めるキース・デイリー氏は、廃棄物削減に向けた長年にわたる同社の取り組みをさらに促進するため、Loopとの契約を決めたという。クローガーは今年10月から、オレゴン州ポートランド地域にある25のフレッドメイヤー店舗で、6ヶ月間にわたってLoopを試験導入する。そこに設けられるLoopの専用コーナーには、クローガーの独自商品も一部含めた20アイテムを展示し、 同社の取り組みを顧客に説明するLoopのアンバサダーも配置する。

 デイリー氏は、「これは社会や市場の仕組みを劇的に変えるゲームチェンジャーとなりうるコンセプトだと確信しています」と述べている。

 Loopは当初、現時点までに達成する各種店舗やレストランなどの提携店数目標を1000店としていたが、新型コロナのパンデミックによって事業拡大が遅れた。パンデミック下では、それまで行っていた食料品パッケージの共同回収ボックスの店頭設置などの廃棄物削減の取り組みを中止した店舗も多かった。ザッキー氏によると、そういった状況にもかかわらず、Loopへの需要はいまなお根強いという。

 ウィア氏によれば、2006年にウォルマートが「パッケージの持続可能性の観点からサプライヤーの格付けを開始する」と発表したことが、 包装業界にとって大きな転換点となった。

 持続可能性への関心が実際に高まったのは、それ以降のことだ。その機運の高まりを象徴するように、ミシガン州立大学はアメリカ最大規模の「パッケージング学科」を立ち上げた。そこで学ぶ600名の学生たちのほぼ全員が、この分野を専攻する理由に環境問題を挙げている。

 米国公益研究グループ(U.S. PIRG)の環境キャンペーンディレクターを務めるマット・カサーレ氏は、再利用可能なパッケージを社会の主流にしていくことの重要性を感じている。その上で、製造、包装、出荷されるすべての商品に関して、より深く考える社会になることを望んでいる。

 最近メイン州で、リサイクル促進のための費用をパッケージの製造企業に負担させる拡大生産者責任法が可決された。U.S. PIRGではこのような法律を後援しているほか、コロラド州などいくつかの州で法制化された、使い捨てビニール袋やポリスチレン製の食品容器を州レベルで禁止する施策のサポートも行っている。

 カサーレ氏は、「多くの人口を抱えるこの非常に小さな惑星上で人類が存続していけるよう、私たちの行動すべてを見直すこと。それは21世紀の私たちが取り組むべき課題です」と述べている。

By DEE-ANN DURBIN AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP