公共交通の無料化は本当にエコなのか? 欧州の事例から学ぶ

ストラスブール市を走るトラム|olrat / Shutterstock.com

 フランスのストラスブール市とモンペリエ市は、9月1日から未成年者などを対象に、バスやトラム(路面電車)など公共交通機関の利用を無料化した。これは、エコロジカルかつエコノミックな目的をもつ施策だ。だが、交通機関の無料化は本当に環境に良いのだろうか?

◆環境・社会・経済的側面
 ストラスブール市で対象となる交通機関はトラム6線、バス40路線、スクールバス13路線。対象地域の未成年者数は約8万4200人。これは、ヨーロッパエコロジー・緑の党(EELV)に属するストラスブール市長の2020年の選挙公約に沿う決定でもある。(フランス・ブルー、2/23)

 年間経費600~700万ユーロ(約7.7~9億円)と見積もられる無料化政策の目的は、若い世代に公共交通機関の利用を根付かせ、子供の送迎の乗用車利用を減らすことで大気の質を改善し、市民の購買力を高めるというものだ。試算によれば、子供が2人いる世帯では一年に約500ユーロ(約6万4000円)の余裕が生まれるという。(5minutes RTL、8/31)

 モンペリエ市のほうは、未成年者に加えて65歳以上の市民も無料化対象とする。ドゥラフォス市長は、車の混雑や地球温暖化に対抗する環境的側面と世帯の購買力を上げる経済側面に加えて、年金世代が外に出かけやすくなる社会的側面の効果を強調。続いて2023年終わりまでに全市民の公共交通機関無料化を目指すとする。

 また、フランス北部のリール市も2022年1月から18歳未満を対象に、メトロ、トラム、バス、貸自転車などを無料化すると決めた(キャピタル誌、6/28)。

Text by 冠ゆき