「リサイクル」の落とし穴 プラスチックを拒否する理由
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◆「リサイクル」という都合のいい誤解
しかし、日本ではゴミ分別やリサイクルを徹底して行っているから問題ないと思う人も多いかもしれない。実際、日本のプラスチックのリサイクル率は84%と発表されている。しかし、リサイクルという言葉に惑わされるべきではない。リサイクルには、「ケミカルリサイクル」「マテリアルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3つが存在する。プラスチック循環利用協会によると、2018年の日本のリサイクル率は84%で、内訳はケミカルリサイクル4%、マテリアルリサイクル23%。マテリアルリサイクルのうち15%は中国に輸出されてからリサイクルされており(現在は中国政府がごみ輸入を完全禁止したため輸出停止)、国内でモノからモノへと生まれ変わるマテリアルリサイクルは全体の8%ほどだった。残りの56%は「サーマルリサイクル」、つまりごみ発電である。先述したように、プラスチックを燃やすと二酸化炭素が排出され地球温暖化に繋がる。これが日本のリサイクルの現状である。
米国でも「リサイクル」という言葉を利用し、プラスチック産業側が国民を巧妙に誤解させていた過去がある。1980年代後半の米国では、地球に及ぼす影響が明らかになりプラスチック反対デモなどが急増した。全米の州および地方当局は、廃棄物と汚染を削減するためプラスチック禁止を検討していたが、これを回避し、プラスチック製造会社が売上を伸ばし続ける方法としてリサイクルを宣伝し始めた。NPRとPBSのシリーズ番組FRONTLINEとの共同調査で製作されたドキュメンタリー『プラスチック戦争』ではその事実が明らかにされている。プラスチックの製造者である石油・ガス会社は、リサイクルが経済的には成り立たないという事実を知りながらも、プラスチックのイメージ回復とリサイクル促進と称して宣伝広告に数百万ドルを費やしていた。「リサイクルが最終的に十分に機能するであろうという熱狂的な信念は決してなかった」と、当時プラスチック工業会(Society of the Plastics Industry / SPI)と呼ばれていた産業側ロビー活動団体の政府担当部門の元副会長ルイス・フリーマン氏は語った(NPR)。
◆4R活動を取り入れる
現在の新型コロナウイルスの影響で、マイボトルの使用禁止やテイクアウトの増加により一度きりで捨てられてしまうプラスチック製容器も多くなった。それによりゴミの量も増え、ごみ回収車が追いついていないほどである。問題の解決のために必要なことの基本として、3Rが必要だと言われてきたが、最近ではもう一つRを加えた4R活動、Refuse(リフューズ)=無駄な消費を拒否する、リデュース(Reduce)=出すごみの総量を減らす、リユース(Reuse)=再利用する、リサイクル(Recycle)=再生産に回す、が提唱されている。7月から始まったレジ袋の有料化により、プラスチック問題への関心が高まることに期待する。
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