天然ガスの落とし穴、漏出するメタン……温室効果がCO2の20倍

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◆まさに革命的! 衛星が漏出を検知
 漏出探知で期待されるのが衛星だ。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された研究によると、欧州宇宙機関が打ち上げた衛星TROPOMIが、オハイオ州で昨年起きた事故で噴出したメタンの排出を探知・測定することに成功している。

 この事故が起きたのは18年2月で、損傷を受けた天然ガス井から20日間で60キロトンのメタンが漏出していたことがわかった。これは、フランス、スペイン、ノルウェーなどの欧州諸国の年間メタン排出量を上回る量だ(CNN)。

 ロイターによれば、これまでは衛星で漏出を見つけるためには注意深く的を絞らなければいけなかったが、今回は通常の巡回で探知されたという。PNASの研究の共同著者であるスティーブン・ハンブルグ氏は、現在の温暖化の4分の1は人間の活動により排出されたメタンが引き起こしていると述べる。通常の衛星の測定でメタンの放出が分かることが示されたのは、「革命の始まり」ということだ。将来的には、主要な油井や天然ガス井の事故によるメタンの排出を発見するだけでなく、日々のオペレーションにおける小さな漏出にまで衛星が使えるようになることが期待されているという(CNN)。

◆メタンの寿命は短い 漏出食い止めがカギ
 メタンはより多くの熱を閉じ込めるが、大気中に出てしまえば、約12年でほとんど分解される。つまり、排出削減をすれば、大気中の濃度が早く減少するはずだ。

 科学者の間には、メタン漏出の問題があるため、再エネ移行を促進してしまうほうがよいのではという意見もあるという(MITニュース)。もしも衛星などを使い漏出の削減が進めば、天然ガスはネットゼロ社会実現への適切な橋渡し役となりそうだ。

Text by 山川 真智子