「福祉国家」のダークサイド フィンランドの医療制度改革待ったなし

astudio / Shutterstock.com

◆少子高齢化深刻 改革もとん挫
 しかし、130年の歴史を持つフィンランドの医療制度は曲がり角に来ている。ほかの先進国同様、高齢化が深刻で、これが社会保障制度に財政的プレッシャーを与えている。老後も長く生きる人が増えれば、年金や医療保険の支出も増加する。このコストは税金で負担することになるが、それを支払う働く世代の人口が減ってきている。2018年では、フィンランドの65歳以上の人口は全体の21.4%を占め、ドイツと並び欧州で4番目に高齢者が多くなっている(BBC)。

 実は高福祉高負担の北欧諸国は軒並み同様の問題を抱えており、各国で制度の見直しが進められている。フィンランドでは、出生率の急激な低下などの人口動態変化の影響が2008年から2009年の金融危機で拡大し、とりわけ状況が厳しくなっている。過去12年間にいくつもの政権がコストカットと効率化による医療制度改革を試みたがいずれも失敗。今年3月には医療制度改革を進めることができなくなったとし、連立政権が総辞職している(ロイター)。

◆デメリット指摘も サービス低下必至
 フィンランドは分散型の医療制度となっており、市町村が管理運営している。規模も人口100人以下から数十万人と様々で、分散型の性質上、維持コストが高くなるだけでなく、医療の質に大きな差が出ている。市町村が受け取る医療サービスのための資金は、課税対象となる人口の規模によって決まるため、コストが高くなる遠隔地や人口がまばらな地域では、サービスの提供が難しい(CNN)。

                                                                                                                 

 2013年にはOECDから、フィンランドはほかのOECD諸国に比べ、満たされない治療ニーズの割合が高いと指摘されていた。当時4%以上のフィンランド人が、費用、移動距離、診療待ちの期間の長さが原因で治療ニーズが満たされていないと回答しており、ほかの北欧諸国やオランダと比べかなり高い割合だった。もっとも国民の大半は現在の制度に満足だとしているが、今後は制度をささえる財源は減るため、さらなるサービスの低下が起こると社会政策アナリストのHeikki Hiilamo氏は述べている(CNN)。

◆外からは見えない? 制度のダークサイド
 前政権は、財政的に持続可能なシステムにするため、改革案として医療サービスを一元化し、民間オプションも導入することでコスト削減を目指していたが、実現には至らなかった。Hiilamo氏は、改革しなければフィンランドのシステムはさらに不平等になり、貧乏人と遠隔地に住む人々は、もともと彼らを助けるためにできたシステムの外にどんどん追いやられると述べる。同氏は、外の人々は制度の明るい面しか見ないようだとし、フィンランドの医療制度にはダークサイドが存在するとしている(CNN)。

Text by 山川 真智子