「地球のために飛行機に乗らない」欧州に広がる「飛び恥」、列車利用が増加

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◆一人の座り込みが一大ムーブメントに
 空の旅が環境に悪いことは以前から指摘されていたが、複数の要因が重なって、スウェーデンの「飛び恥」ムーブメントにつながったとNBCは指摘する。一つは2018年に異常に暑い夏とそれに伴った深刻な森林火災がもたらされたこと。このおかげで気候変動への議論が進んだ。また、同年秋の総選挙も、気候変動を最重要課題とすることに役立ったという。

 そしてそれよりも影響が大きかったのは、16歳の学生、グレタ・トゥーンベリさんの活動だ。彼女は15歳で気候変動への対応を訴え、スウェーデン議会の前で一人座り込みを開始した。2018年の総選挙の際にも早急な対策を求めて座り込みを行い、賛同者が続々と現れ大きな話題となった。航空機利用を拒否し、気候変動の会議や講演参加の際には列車を利用しているという。8月にニューヨークで開かれる国連の地球温暖化に関する会議には、船で現地入りすることにしているそうだ。ちなみにオペラ歌手の彼女の母親も、自分の国際的なキャリアを犠牲にしても、航空機を利用しないと2016年に明言している。

◆鉄道人気復活 ただし課題も満載
 タイム誌によれば、「飛び恥」ムーブメントの広がりで、格安航空会社に客を奪われ赤字続きだったスウェーデンの長距離夜行列車のチケット売り上げは、今年前半で20%も伸びたという。同区間の航空機の利用は減少しており、国内線全体でも今年の第一四半期は昨年から4.5%減少した。「飛び恥」効果はSNSの影響もあり、ほかの欧州諸国にも広がっている。欧州最大の国際旅客鉄道、オーストリア連邦鉄道OBBでは、今年の夏、夜間1便の列車を3便にして対応するほどの忙しさだということだ。

                                                                                                                 

 ただ、鉄道利用は時間とコストの面で課題がある。たとえば、ロンドンからバルセロナまでは列車で16時間、費用は145ドルかかるが、航空機利用なら2時間弱でチケットも安いものなら35ドルで買うことができる。さらに問題なのは乗り継ぎだ。タイム誌によれば、1990年代中頃の格安航空会社の台頭で、欧州の多くの鉄道会社は長距離線を廃止したり売却したりしており、欧州の主要都市をダイレクトに結ぶ路線がほとんどなくなっている。各国で、長距離線への投資、新路線建設が始まっているが、完成が10年後ということもしばしばで、現在の需要を満たすのは困難だという。また、「飛び恥」が一過性のムーブメントで終わる可能性も否定できず、鉄道各社も先が読めないようだ(タイム誌)。

◆航空機も対策中 地球にやさしい旅を
 ブルームバーグによれば、「飛び恥」を感じず飛行機に乗る方法もある。カーボンオフセットという制度で、チケット代に加えて追加のお金を支払い、その額を植林、ソーラーパネル設置などのクリーンエネルギーのためのプロジェクトに拠出するというものだ。世界の航空会社がそれぞれ取り組みを始めている。

 海を隔てた場所に行くのなら、もっとも環境にやさしい方法は貨物船に乗ることだという指摘もある。多くの貨物運送会社が民間人の乗船を受けつけており、環境保護を意識する人々が利用しているという。リーズ大学の気候物理学教授、ピアース・フォスター氏は、人と手荷物の重さは貨物船にとって微々たるものであるため、人を乗せることで発生する二酸化炭素は基本的にゼロで、もっとも効率的な旅の手段だとしている(NBC)。

Text by 山川 真智子