温暖化対策に乗り出した消費財メーカーたち 投資家からも厳しい目線

AP Photo / Mark Humphrey

 2月25日に発表された報告によると、石けんから炭酸飲料に至るまで、誰もがよく使う一般消費財を製造している企業は、気候変動がもたらす影響を経営の方程式に組み込み始めているという。

 非営利団体のカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)が大手製造メーカー16社を対象に実施した調査によって、多くの企業が二酸化炭素排出量の削減、サプライチェーンにおける地球温暖化への影響対策、そして、顧客が抱く環境意識の高まりへの対応に取り組んでいることが判明した。

 ロンドンを拠点とするCDPは、酒類メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブがさまざまな種類の大麦を育てるのに必要な水の量を少なくしたり、ユニリーバが最新の洗浄機に合わせ、より「エコ」な低温でも十分な洗浄力が得られるように洗剤の成分を調整したりする取り組みは、その好例だと語る。
 
 この報告の主執筆者であるキャロル・ファーガソン氏は、「多くの企業が、消費者の嗜好の変化にどれだけ対応しているかに驚いた」と言う。

 倫理上の、もしくは、健康上の理由から動物由来の製品を避けるヴィーガンと呼ばれる人々は、市場においては依然、少数派ながらも確実に増加傾向にある。環境に配慮した企業の取り組みは、このトレンドの追い風を受けているだけでなく、肉や乳製品の製造には大量の二酸化炭素の排出が伴うという事実も見逃せない。最近ペプシコが、プラントベース(植物性)の栄養スナックバーを製造販売するヘルスウォリアーという企業を買収した。大企業がこれまで手が回らなかったニッチな市場を押さえるために、小規模なブランドを獲得した典型的な一例だ。

 企業が気候変動に対する行動気運の高まりを察知し始めているなか、このような買収や合併は、緑化に対する確かな実績を積み上げるのに貢献する。消費財の生産に伴う温室効果ガス排出は、全排出量のおよそ3分の1を占めている。今世紀末までに地球の温暖化を2℃未満に抑制しようという取り組みにおいて、企業が重要な役割を果たすことになるのだ。

 ネスレ、コカコーラ、およびプロクター・アンド・ギャンブルといった製造メーカーは、投資家たちの厳しい監視の目にもさらされているとファーガソン氏は語る。投資家たちは株を購入する前に、企業が気候変動によってどのようなビジネス上のリスクに直面しているのかを知りたいと考えるためだ。

 CDPは、気候変動が事業に与えうる脅威の大きさ、対策の充実度、そして、市場に向けてどれほどの情報を開示しているのかに基づいて、調査を行った企業をランク付けした。

 ファーガソン氏はAP通信に対し「気候変動は、企業の収益と支出に対し、破壊的な影響をもたらすことになる。私が投資家として知りたいのは、企業が今後、どのような戦略を掲げて取り組もうとしているのかについてだ」と述べている。

 CDPによると、短期間で売られ、変化の速い消費財を製造販売するヨーロッパ各国の企業は、アメリカのライバル企業よりも一歩先んじて気候変動への対策を進めていることが明らかになった。自動車、石油、およびガス産業の分野においてもやはりこの差異が認められる。CDPのランキングにおいて、フランスのダノンは飲料・食料部門で首位となり、アメリカのクラフトハインツは最下位の9位だった。同様に、パリに拠点を置く化粧品メーカーのロレアルが家庭用品・日用品部門で2位だったのに対し、ニューヨークを拠点とするライバルのエスティローダーは最下位の11位だった。

 欧州連合(EU)各国の規制のほうがより厳しいという事実が、このような格差の背景にあるとファーガソン氏は言う。
 
 今回の報告によると、プラスチック廃棄物に関する消費者の懸念が、包装に関するEUの新しい厳格な規則の制定に拍車を掛けたという。

 報告の執筆者たちは、「近い将来、製品のラベルに二酸化炭素排出量を表記することになる」と付け加えた。

 かつてハーバードビジネスレビューは、CDPを「過去に類を見ないほど強力に緑化を推進する民間非営利団体」であると評した。しかし、企業が気候変動によるリスクを公表する時がきたと示唆しているのは、CDPだけではない。

 経済界に大きな影響力を持つ週刊誌のエコノミストは最近、「世界の金融システムを監視する国際機関である金融安定理事会が、上場企業に向けて策定した気候変動に関する自主的なガイドラインの遵守を義務化すべきである」と提唱した。

Translated by ka28310 via Conyac
By FRANK JORDANS, Associated Press

Text by AP