昆虫食、粉から主流化する? パン、菓子に使われるコオロギ、蚕パウダー

 今年1月、EU でコオロギをはじめとした養殖ものの昆虫がノベルフード(新食品)と認定され、広く流通するようになった。昆虫食自体については、国連食糧農業機関(FAO)が2003年から食用化に取り組んできており、食糧危機の有力な解決法として推奨する報告書を13年に発表している。近頃は、見た目の問題を解消した、凍結乾燥の上粉末にしたコオロギ・パウダーが主流になってきている。コオロギ・パウダーは海外でも日本でもネットで買える状況だ。

◆昆虫パンと昆虫スナックが発売
 先日筆者は、自然科学研究教育センターシンポジウム「昆虫のサイエンス最前線」に聴講参加した。そのなかで、徳島大学の三戸太郎准教授による「フタホシコオロギの食料資源化に向けた研究」という講演があり、参加者の強い関心を引いていた。フタホシコオロギはヨーロッパのコオロギに比べて体長が大きいので生産効率がいいという。三戸氏はパウダーのほか、ビスコッティや非常食のパンに配合した加工商品を研究している。これらを扱うベンチャー企業の立ち上げを目指しているという。三戸氏が、パンであるのに炭水化物だけでなくタンパク質を同時に摂取できるという利点に言及していたのが印象に残った。

 ジェトロのレポートによると、フィンランドの食品会社は、オランダからコオロギを輸入し、一斤あたり70匹分の粉末を使ったパンを昨年からスーパーで販売している。また別の会社は、自国で養殖したコオロギを使ったスナックやシリアルを販売しているという。現在昆虫食の取り扱いがある欧州の国は、オランダ、デンマーク、ベルギー、オーストリア、スペイン、イギリス、ドイツ、フィンランド、スイスという調査結果となっている。

 昆虫食に取り組むのはヨーロッパだけではない。オランダのニュースサイト『Food Ingredients First』によると、最近中国で国内初の昆虫スナックが発売された。蚕パウダーが20%配合されているスナックを製造するBugsolutelyの創始者、マッシモ・レベルベリは、「私たちは本当に興奮している。1年間の研究開発を経て、おいしくて、とても栄養価が高いスナックをつくることができた。この商品は、食品と飲料のイノベーションフォーラムから革新的な賞を受賞した」と話す。
 
 絹糸が繭から引き出された後、蚕のさなぎは処分される。上述の記事によると、世界中で75万匹が養殖されていて、そのうち75%を中国が占める。大半は乾燥して飼料とされる一方、一部は食用にされ、中国同様、珍味として食されるタイ、日本、韓国などに冷凍ものが輸出されている。

 レベルベリ氏は、「昆虫スナックは急成長するカテゴリー」とし、「非常に高価なコオロギ・パウダーより蚕パウダーは安価」と語る。中国で昆虫を食べることをゲテモノとしていない省には6億人以上が暮らしており、同社は上海とこれらの県をターゲットとする予定だ。また、ヨーロッパで養殖される昆虫は養殖経験が少ないのに対し、蚕は5000年以上前から養殖されていた歴史も強みになりそうだ。

Text by 鳴海汐