仕事における幸福を促進するウェルビーイングの文化
◆ウェルビーイングを促進する
見せかけの幸福に対し、従業員を尊重し、あら探しではなく褒めて報いることで従業員を管理し、従業員に柔軟な働き方を認めてワークライフバランスを提供するウェルビーイングの文化(身体的、精神的、社会的に良好な状態)の中で働くことは全くの別物だ。これこそが幸福への真の鍵であることが研究で分かっている。
2017年に行われたによると、57パーセントの企業に最低1人は在宅ないし希望勤務地での遠隔勤務者がいた。対象となった企業によると、これは必要な人材を確保するための選択だったという。そもそも、その仕事に最適な人材が近くにいるとは限らないし、オフィスに余裕があるとも限らない。
しかし、この選択には別のメリットもある。遠隔勤務を認めるという暗黙の信頼と自主性を従業員に与えることは、無料のコーヒーとフルーツを用意したオフィスに引きずり込むことよりも彼らを幸福にするだろう。
イギリスの改革論者ジョン・ラスキンが、「人が仕事で幸せになるためには、必要なことが3つある。その仕事に向いていること、頑張りすぎないこと、そして、達成感を得られることだ」と語ったのは、1851年のことだ。
◆性格のタイプ
研究によると、従業員の幸福は、その性格によっても左右される。私たちが設立した、職場のウェルビーイングに関するコンサルタント企業ロバートソン・クーパー社は、異なる企業や部署の従業員3,200人を対象にした大規模な研究を行った。その結果、ある性格タイプの従業員は、ほかの性格タイプの従業員よりも“仕事でのいい日”を多く体験していることが分かった。
ポジティブな感情と熱意のスコアが高い従業員、悲しみ、絶望、孤独のような抑鬱傾向のスコアが低い従業員、そして、“作業を始めたら最後までやり遂げる”従業員について、“仕事でのいい日”の日数が特に多いことを私たちは発見した。
この3つの性格特性をまとめると、3つの性格特性すべてを持ち合わせる従業員の“仕事でのいい日”が79パーセントである一方、これらのスコアが低い従業員の“仕事でのいい日”は57パーセントにとどまった。この数字は、仕事に対する満足度、健康状態、生産性に結びつく。
この結果が示唆するのは、雇用者はこの3つの性格特性を持つ人材を採用するべきということだが、もちろん、これらの性格特性は欠くが、それ以上に重要な能力を持っている人材がいる可能性もある。そして、幸福の特性を考慮して人材を採用したところで、仕事における満足は、心から従業員を尊重し、信頼し、思いやりと共感をもって管理し、その生活によりよいバランスを提供する職場文化によるところが大きいだろう。
私たちの近著『Well-being: Productivity and Happiness at Work』(ウェルビーイング:仕事における生産性と幸福)では、このような幸福の文化がどのように純利益を引き上げるかを、ロールス・ロイス、BT、ジョン・ルイス・パートナーシップ、ネットワーク・レール、英国行政府をはじめとする大手雇用者のケーススタディで示している。
仕事における幸福と満足は、ランチに寿司をおごってもらうことでも仕事中に肩をもんでもらうことでもなく、上に立つ人間の態度によってもたらされる。マーク・トウェインがかつて、「あなたの夢や希望をけなすような人間には近づくな。つまらない人間はあなたをバカにするが、真の偉大な人間はあなたもきっと夢を実現できると思わせてくれる」と言ったように。
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Naoko Nozawa
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