STAP細胞 海外の反応まとめ
STAP細胞研究をめぐる小保方氏・理研の騒動は、世界中から批判的にとりあげられている。
STAP細胞と名付けられた万能細胞の発見は、今年1月ネイチャー誌に掲載され、移植・再生細胞の研究の流れを大きく変えると期待された。研究のユニットリーダーであった小保方晴子氏は、万能細胞を生成することに成功した先駆者として大きな話題となった。
しかし、論文は掲載直後から、研究データが捏造ではないかとの疑いを指摘された。7月、小保方氏は、論文の撤回に同意。その後、共同執筆者の笹井芳樹氏が自殺するという悲惨な事件が発生した。
STAP細胞の存在は、その後の検証実験でも確認されず、小保方氏は理研を辞職した。
今回の騒動を取り巻く科学界の体質を問題視する声が世界中から出されている。ある海外の有識者からは、理研の今後に向けた改革案の不備を指摘する声が挙がった。カリフォルニア大学医学部のポール・ノフラー准教授は、共同著者であるバカンティ教授の言動の不可解さを指摘すると同時に、ネイチャー誌の論文評価に対する姿勢も批判した。
国内のメディアからは、日本科学会の展望を憂う声も挙がっており、それらも過去より存在する日本科学界の無責任体質が根本にあるとまとめられている。
以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。
1)理研、STAP細胞再現できず 組織改革案発表も、“手ぬるい”と識者批判
研究者らは、論文にあるように通常の細胞から万能細胞を作り出す実験の再現を行った。しかし、実験は、最初の段階から非常に難しく、そもそもそのような細胞を作ることすらできなかった(AFP)。
理研は検証実験の中間報告と同時に、小保方氏が所属する発生・再生科学総合研究センター(CDB)の改革を発表した。センターの名前を改め、約400人いる職員を半分に削減するという。また、新しいトップには海外の研究者も置くと説明している。
ウォールストリート・ジャーナル紙では、東京大学のロバート・ゲラー教授(地球物理)が、理研の組織改革は中途半端だと批判している。現在の管理状況について説明責任を追求していない。不正に気づき、責任者を替えるまでに余りにも時間がかかり過ぎだという。
(ウォールストリート・ジャーナル紙は、理研の改革案の提出について、日本の科学研究の評判が、いかに痛手を受けたかを示している、と報じている。理研には、誠実な研究を促進するための組織の再編を願うばかりである。)
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2)STAP細胞、「コツはない」と共著者バカンティ教授が断言 小保方氏と異なる見解の理由とは?
カリフォルニア大学医学部のポール・ノフラー准教授は、この研究はもはや「終わりの始まり」であると断言する。最大の問題は、論文において、複製、改ざん、盗用など「悪夢のような混沌」があることだと指摘。これは、たとえ再現実験が実現しても、残る問題だ。同氏は、Nature編集部か著者が論文を取り下げるべきだ、と主張する。
問題はまだ続く。新たに発表されたバカンティ教授のSTAP細胞作成方法が、Nature誌に掲載されたものとも、理研グループが発表したものとも違ったのだ。ノフラー博士はこれを、「何もしない共同著者」が論文に名を連ねている、と批判している
(バカンティ博士へのインタビュー記事のなかで、同氏はSTAP細胞作成には、方法としてコツのようなものないと話している一方で、責任者の小保方氏は記者会見で、「STAP細胞作成には特別のレシピやコツがある」と断言していた。共同研究をしているはずの両者の発言が一致していない点について、疑問が残る。)
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3)STAP細胞、理研やNature誌にも問題ありと海外識者指摘 理研の調査委員長は不正疑惑で辞任
カリフォルニア大学医学部のポール・ノフラー准教授は、今回のSTAP細胞をめぐる理研の指導方法、管理体制の不備や、Nature誌の論文の評価方法に問題があると指摘した。
一方で、STAP論文について理研の調査委員長を務めた石井俊輔氏は、過去の論文における画像データの使い回しや捏造の疑いが報じられている。同氏はコメントを発表し、「論文に問題はない」と主張。しかし、理研の調査委員長は辞任すると発表した。
(同氏の主張からは、論文を慎重に検証せず、センセーショナルな広報を行った理研に対する批判も垣間見える。理研やNature誌には、過去の慣習にとらわれない、正確かつ事実に基づいた研究並びに評価を行ってほしいものである。)
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4)STAP論文不祥事で露呈した、日本科学界の根強い無責任体質(コラム)
今回のSTAP細胞の一件を契機に、日本の研究者を取り巻く環境が見直されつつある。
現在、日本の研究機関、政府機関のモラールの凋落ぶりは枚挙にいとまなく、一般の期待・イメージからはほど遠い。今回の事件は、このようなモラール(士気)の低下と、責任をもってそれを正す気概がなく追認することで正当化しようとする体制が背景にあると、ある国内メディアは報じている。
(批判の的は、無責任な日本の科学界だけでなく、ネイチャー誌にまで及んでいる。カリフォルニア大学医学部のポール・ノフラー准教授は、ネイチャーの編集方針の秘匿性を指摘し、小保方氏の論文の掲載に関して責任ある決定が必要であったと痛烈に批判している。)
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5)笹井氏自殺、世界も衝撃 一連のSTAP論文騒動、日本の科学界への信頼失墜と海外報じる
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の副センター長、笹井芳樹氏が、8月5日午前、自殺した。笹井氏は、掲載誌Natureから取り下げられたSTAP細胞論文の共著者で、小保方晴子氏の実験を基に、執筆を指導していた。
ロイターは、今回の笹井氏の一件について、「科学研究における国の評判を損なった」「日本の科学の信頼性に対する疑いが起こった」と、日本全体の問題として捉える視点で批判している。
(国内からも多くのコメントが出されている。理研理事長の野依氏は「世界の科学界にとってかけがえのない科学者を失ったことは痛惜の念に堪えません」とコメントしている。菅官房長官は「世界的に大きな功績があった。非常に残念だ」と述べている。)
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