STAP細胞、理研やNature誌にも問題ありと海外識者指摘 理研の調査委員長は不正疑惑で辞任

 理化学研究所のSTAP細胞研究への疑義が高まり、直接関与した研究者が登場しての会見や、それをめぐる分析や解説、憶測や意見表明がさまざまにとりざたされている。

【識者の見解 Nature誌にも問題】
 カリフォルニア大学医学部のポール・ノフラー准教授は、世界で「最も影響力のある50人」の幹細胞研究者だ。的確な評論で定評ある自身の科学ブログ・サイトで、「今回のSTAP細胞さわぎから学ぶ10の教訓」という記事を公開した。

 同氏が指摘する主な問題点は下記の通りだ。
(1) STAP(とされている)細胞の自己蛍光現象についての誤った解釈
(2) 人目をひく要素がそろい過ぎ:論文テーマ、大物の共著者、投稿誌、すべてにおいて「派手さ」が際立つ
(3) 名前だけ連ねて何もしない共著者
(4) Nature誌では画像・文書の「盗用防止スクリーニング」が行われていないという欠陥があった。欧州分子生物学機構の雑誌The EMBO Journalならば、このような論文は採択されなかった

 同氏は、STAP細胞が実在するかについてはコメントを避けながら、「まやかし」は排除しなければ、と主張している。専門家ならではの分析だが、Nature誌の対応も問題としている点が鋭い。

【識者の批判 過去のスキャンダルを想起】
 東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学者)も、ノフラー氏のサイトに寄稿。ゲラー氏は、今回の騒動は、かつての「常温核融合」スキャンダル(1989年)を思い出させる、と述べる。著名な学者による発表、画期的で実用性が高くマスメディアが注目、再現実験がことごとく失敗、などが共通点だろう。

 なお同氏は、日本でさかんな「地震予知」研究を批判。2011年4月には、同テーマでNature誌にも寄稿している。不確実性が高く、リスク評価に適していないにもかかわらず、学会の予算獲得のために使われていると辛辣だ。

 同氏の主張からは、論文を慎重に検証せず、センセーショナルな広報を行った理研に対する批判も垣間見える。

 さらに24日、STAP論文について理研の調査委員長を務めた石井俊輔氏に対し、過去の論文における画像データの使い回しや捏造の疑いが報じられている。同氏はコメントを発表し、「論文に問題はない」と主張。しかし、理研の調査委員長は辞任すると発表した。

【海外紙の報道 小保方氏の主張に驚き】
 日本を舞台にした、科学上のこのような事件は珍しく、海外各紙も注目している。国内が騒然としているこの状況は、2005年末に発覚した韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大学教授の「ヒト胚性幹細胞捏造」(ES細胞論文の捏造)事件と、二重写しとも見えるらしい。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、STAP細胞論文の主著者である小保方晴子氏を、以前は“ノーベル賞に匹敵する”ともてはやされたが、いまや論文を撤回すべきと批判されている、との変遷を紹介。小保方氏のみに問題があるかのように批判されていることにもふれている。

 ロサンゼルス・タイムス紙のカレン・カプラン氏(科学・医学部門)は、小保方氏が、記者会見で謝罪はしたものの、「STAP幹細胞は実在しており、200回以上も作成に成功した」と断言したことに、驚きを隠さない。

【数々の疑惑、さらに再現実験の成功事例なし】
 同紙はSTAP細胞論文について、掲載画像や文章が他の文献からの盗用ではという疑惑にふれた。さらに問題なのは、再現実験がないことだ、という。共著者で指導著者の若山照彦教授(山梨大学)でさえ、他の機関により実証されるまで論文を撤回するよう求めた、と報じる。なおNature誌は、精査はしたが論文は取り消していない。

 香港中文大学の李嘉豪(リー・ケニース)教授(生物医学部)は、科学者向け情報交換サイト『リサーチ・ゲート』で、小保方氏らによる論文へのレビューを発表。これは再現実験を行おうとしたことを示す。一時は一部メディアで「再現実験の一部に成功した」とも報じられたが、本人はレビューにおいてこれを否定。データを検討・分析した結果、STAP細胞は存在しないと考え、再現実験を中止すると表明した。

 今回の小保方氏論文の共著者でもあるハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授のみ、撤回に反対している。同教授は、ニューヨーク・タイムズ紙(1月29日付)のアンドリュー・ポーラック氏に対して、すでに成熟したサルでSTAP細胞を使った治療実験に成功した、と語ったこともある。独自の作製方法を公表するなど強気の姿勢だ。

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Text by NewSphere 編集部