北朝鮮×拉致 海外の反応まとめ
北朝鮮による拉致問題の解決に向けて、重大な局面がやってきた。
北朝鮮の拉致問題は、1970年頃にまで遡る。当時、北朝鮮による日本人拉致が多発し、現在までに、17名が政府によって拉致被害者として認定されている。
平成14年9月に北朝鮮は日本人拉致を認め、同年10月に5人の被害者が帰国したが、他の被害者については、未だ北朝鮮から納得のいく説明はない状況であった。
日朝の国交正常化が長らく遠のいていた状況の中、近年、安倍首相が拉致問題解決を自身の政権における最大の公約として掲げ、拉致被害者と拉致された疑いのある特定失踪者の調査などを正式に再開することとなった。これを受け、日本政府も北朝鮮に対する独自の制裁措置の解除を始める形となった。再調査の合意は金正恩(キム・ジョンウン)体制発足後では初めてとなる。
米メディアによると、中国との関係が芳しくない今が、日本にとって拉致問題解決の最大のチャンスであるとの報道がなされている。
しかし、一方で、日朝の歩み寄りは、日米韓の安保共助にも影響を及ぼすだろうとの懸念の声も挙がっている。
様々な国の思惑がひしめき合うこの拉致問題は、果たしてどこに向かうのであろうか。
以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。
1)北朝鮮、拉致再調査へ 韓国紙“日米韓の足並みが乱れる”と懸念
日本と北朝鮮は、北朝鮮が日本人拉致被害者の再調査を行うことに合意した、と発表した。
安倍首相は、「拉致問題の完全な解決は、安倍政権の最優先事項のひとつだ」「全ての被害者家族が再び我が子をその胸に抱きしめる日が来るまで、我々の任務は終わることはない」(ニューヨーク・タイムズ紙)と、任期中の解決を約束している。
韓国の中央日報は、安倍政権のこうした「独自の対北朝鮮路線」は、日米韓の安保共助にも影響を及ぼすだろう、と懸念している。日本が送金などで対北朝鮮制裁を解けば、戦列に1つ2つ穴を開けるようなものだ、と批判している。
(安倍政権による、拉致問題解決の再開について書かれた記事。日本政府は、独自の対北朝鮮路線に否定的な海外メディアの報道に対して、アメリカ・韓国と足並みを揃えてきた金正恩政権への対抗姿勢を崩すとの見方は否定している。)
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2)拉致問題解決、今が絶好のチャンス 中国に見放された北朝鮮は本気と米紙報道
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国とのビジネスパイプであった張氏の粛清後、中朝両国の関係に陰りが見え始めているため、今回は日本にとって拉致問題解決の絶好のチャンスだ、という識者の推論を掲載。北朝鮮側は問題解決に今までになく真剣であり、制裁解除への道を開こうとしているという。
(2008年にも北朝鮮側が拉致被害者の再調査を約束したため、制裁解除を提案していたが、北朝鮮は調査を行わず、制裁も解除されなかった。こうした経験から、日本政府は北朝鮮政府に対し懐疑的になっている、とAP通信は伝えている。)
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3)中国、拉致問題で日本に協力? 日朝協議を取り持つ 海外メディアも行方に注目
岸田文雄外務大臣は、中国の瀋陽で北朝鮮との政府間協議を行うことを明らかにした。
クリスチャン・サイエンス・モニター紙は、昨今、中国は北朝鮮の唯一の同盟国だが、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の態度には業を煮やしている、と報じている。
中国が日朝協議を取り持つ姿勢を示すなか、菅義偉官房長官は、「調査は真摯な態度で行われるべきで、日本は(北朝鮮による)調査が、どのように構成・実行されているのか、何が調査の対象となっているのか、現在の状況はどうなのか、厳密に見極める必要がある」と述べた(ロイター)。
(今回の報道を受け、多くの海外メディアがその動向に注目をしている。今まで北朝鮮に対して親和な態度をとり続けていた中国だけあって、今後その姿勢をどう変えていくのか注目を集めている。)
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4)日本の北朝鮮制裁緩和、海外メディア評価 “影響力強める”、“国連の制裁と矛盾しない”
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下ウォール紙)は、制裁解除の発表を「日朝関係の目覚ましい改善を画する」ものだと伝えた。北朝鮮の核・ミサイル開発計画をめぐって国際社会の圧力が強まっており、中国もまた、これまでの北朝鮮への親和政策を見直しつつある。
ドイツ-日本研究所のセバスティアン・マスロー特別研究員は、今回の措置は、北朝鮮に圧力をかける上で日本の影響力を強めうる、としている。
2006年に北朝鮮が最初に核実験を実施して以来、国連は、北朝鮮に対してさまざまな制裁を課している。その流れと、今回の日本の措置は、矛盾しないのだろうか。そういった懸念に対して、ウォール紙は、今回解除される制裁は、日本独自のものであることを強調し、否定的な見解を伝えている。
(日本が拉致問題解決に向けて、北朝鮮に対する規制を緩和したという記事。多くの海外メディアは、今回の日本の規制緩和政策に対して肯定的な意見を持っており、今後の日本政府がとりうる対朝外交の手腕が注目されている。)
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