中国、拉致問題で日本に協力? 日朝協議を取り持つ 海外メディアも行方に注目

 岸田文雄外務大臣は25日、29日に中国の瀋陽で北朝鮮との政府間協議を行うことを明らかにした。協議には、日本側から外務省の伊原純一アジア大洋州局長が、北朝鮮側から宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交正常化担当大使が出席する予定だ。日本は、拉致被害者について再調査の迅速な報告を求める。

【再調査は進んでいるのか】
 北朝鮮は7月、拉致された可能性のある日本人についての調査を再開し、数ヶ月以内には結果を報告すると約束した。しかし、詳細な報告が期待されていた先週、この約束を撤回、報告には1年かかるだろうとした。「約1年以内に調査が完了することを目指している。現在は初期段階だ。今のところ、この段階で調査の説明を行うことはできない」(米クリスチャン・サイエンス・モニター紙)

 それを受け、岸田外相は、「再調査の進捗状況が現在どうなっているのか確かめる必要がある」と述べた(クリスチャン・サイエンス・モニター紙)。

 菅義偉官房長官は、「調査は真摯な態度で行われるべきで、日本は(北朝鮮による)調査が、どのように構成・実行されているのか、何が調査の対象となっているのか、現在の状況はどうなのか、厳密に見極める必要がある」と述べた(ロイター)。また、日本政府は、調査が完了するよう北朝鮮政府に圧力をかけ、事実の解明を促し続ける、と付け加えた。

【北朝鮮の狙い】
 北朝鮮政府が再調査を申し出たとき、日本政府は北朝鮮に課しているいくつかの制裁を解除すると約束した。北朝鮮人の日本への入国、船の入港、日本からの送金などだ。

 多くの専門からは、北朝鮮がまたもや情報を出し渋っているのは、報告書の提出と引き換えに日本からさらなる規制緩和の好条件を引き出そうとしているのだろう、とみている(クリスチャン・サイエンス・モニター紙)。

【安倍首相にとって重要な懸案】
 安倍首相は長年、拉致問題に関わっていて、職を退くまでに解決させると公約している。日本人にとって非常に感情的な問題だが、首相にとっても、個人的、政治的に重要な懸案だ、とAP通信は報じる。

 日本政府は、公に17人を拉致被害者として認めている。しかし、実際には、1970年代から1980年代にかけて、もっと多くの日本人が被害にあった、との推測を海外紙は取り上げている。北朝鮮は、工作員養成のための施設で日本の文化や言葉を教えるために拉致を行ったとみられている。しかし、拉致の真相はいまだ明らかになっていない。

 実際には数百人ともみられる拉致被害者の多くはいまだ北朝鮮で存命だと考えられている。

【北朝鮮に苛立つ中国】
 クリスチャン・サイエンス・モニター紙は、中国は北朝鮮の唯一の同盟国だが、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の態度には業を煮やしている、と報じている。

 北朝鮮は2013年2月、中国の要請を無視し3度目の核実験を実施、同年12月には、中国政府と強いつながりのあった要人、張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑した。

 習近平国家主席は7月、これまでの慣例を破り、北朝鮮よりも先に韓国を訪問した。中国の国家主席は就任後、韓国よりもまず北朝鮮を訪問するのが習いだった。

 朝鮮労働党の姜錫柱(カン・ソクチュ)書記が先週、中国を2度経由し、ヨーロッパに出かけたが、2度とも中国の政府関係者が同氏に挨拶を伺うことはなかった。異例なことだという。

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Text by NewSphere 編集部