アベノミクス、失敗の可能性? 海外の反応まとめ

 安倍政権が掲げる「アベノミクス」について、失敗の可能性を取りざたする海外報道が出てきた。

 アベノミクスとは、「どれだけ真面目に働いても暮らしがよくならない」という日本経済の課題を克服するため、「デフレからの脱却」と「富の拡大」を目指す政策のことを指す(首相官邸HP)。

 そのために、「大胆な金融政策、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「3本の矢」を掲げている。そのうち1,2本目の矢は既に放たれており、内外の報道は「成長戦略」に焦点が当てられているただし、成長戦略についてはまだ不十分、という見方の海外メディアは多い。

 さらに、4月の消費税増税の影響で、4~6月期の実質GDPが7.1%減(年率換算)となったことも懸念されている。

 このまま経済が回復せず、アベノミクスが失敗すれば、2016年に政権交代もあり得る、という海外報道もある。

 以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。

1)アベノミクス失敗すれば2016年に政権交代あり得る? 米誌指摘

 ノムラ・インターナショナル香港のクルツ氏は、「安倍首相が難しい構造改革を押し進めるためには、もっと時間が必要だ」と同様の見方を示す。安倍政権誕生後、投資家たちは素早い構造改革の実行を期待していたが、それはもはや「非現実的だ」と言う。同氏は安倍首相が自民党内で政策実行のコンセンサスを得るのに苦労しているのが原因だと見ている。

 これについて、『フォーリン・ポリシー』は、2016年の総選挙までに目立った成果が見られなければ、再び政権交代もあり得ると記している。

(さすがに「政権交代」は極論だが、フォーリン・ポリシー誌の期待の裏返しと言えそうだ。同誌は、安倍政権の強いリーダーシップを評価し、「ドラマチック」な政治主導の経済改革を成し遂げられる、と論じている。)
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2)アベノミクス公約達成?失敗? 日本企業1万社のインフレ予測を海外紙が分析

 ブルームバーグはこの結果を、インフレを煽ろうとしてきた安倍政権や日銀にとっては自信をもたらす、重要なデータだと報じた。

 一方、フィナンシャル・タイムズ紙は、来春までに2%達成という公約には届かない点を強調し、日本企業にいまだ「疑い」が残っていると表現する。

(日銀の1万社余りを対象とした物価予測調査結果に対する報道。第一の矢である金融政策に対し、海外メディアは「さらなる金融緩和はあるか?」に注目している。)
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3)アベノミクスは期待外れ? 構造改革、賃上げの進捗に海外から懸念と期待

『The Diplomat』は「アベノミクスは世界の期待に応えられないのか?」という見出しの記事で、大胆な金融緩和や公共事業が実行されているにもかかわらず経済が停滞している日本に対し、懸念を表明している。日本は自国経済を刺激するための努力を十分に払っていない、とアメリカは見ているというのだ。

(賃上げが物価上昇に追いついていない、というデータもある。ただ、安倍首相は、WSJ紙で、アベノミクスの失敗を警戒する根拠はない、と反論している。)
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4)アベノミクス相場に追い風? GPIF、日本株を20%に引き上げか 株式市場への影響に海外注目

 改革ではGPIFが資産構成を、国債40%(現在60%)、日本株20%(同12%)とすることを想定している。海外メディアは、同様に、外国株への配分も厚くする方向だろうという。

 ブルームバーグはGPIFの米沢康博委員長に対して先月行ったインタビューを紹介している。米沢委員長は、新たな資産構成は「まだ何も決まっていない」とした上で、見直し結果は「秋までに公表できる見通しだ」と話したという。

(塩崎氏の厚労相就任で、海外からはさらに期待が高まっている分野。ただし、GPIFの資産構成の変化が日本株への投資に与える影響は直ちには明らかでない、とロイターは報じている。)
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5)朝日“アベノミクス、このままだと失敗” 海外紙“まだ判断は早い” 各紙の指摘する課題とは?

 朝日新聞コラムも、来年消費税を10%に上げる予定のため、自民党や経済界から一層の大規模公共支出を求める声は上がるであろうが、雇用・福祉面などの抜本策がなければ、バラマキ頼みは長続きしないと断じた(なぜか脱原発・エネルギー政策の転換も挙げられている)。このままでは、小泉政権下の「実感なき景気回復」の焼き直しにしかならないと警告する。

 それでもタイム誌は、アベノミクスはまだ経済大実験の途上と評しているし、ウォール紙の記事も主旨としては、アベノミクスを失敗と決めつけるのはまだ早いというものである。

(2月の記事。アベノミクスは結局、借金を増やした大盤振る舞いというだけで終わるのであろうか?という問いについて、メディアによって見方が割れていることがわかる。)
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6)増税前駆け込みで、金の売上5倍の企業も “アベノミクス失敗に備えている”と海外紙分析

 安倍晋三首相が経済政策「アベノミクス」を進める中、インフレ上昇に備えて金を購入する投資家が増えている、とフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。

 投資家の資金が金に集まっているのは、単に増税が理由ではない。金投資の第一人者である豊島逸夫氏は同紙に答え、「徐々にではあるが、確実に、人々はアベノミクスの失敗という最悪の事態に備えている」と述べた。「資産価値を守るため、金はインフレ・ヘッジの役割を果たす。経済がデフレ状態に戻ったとしても、資金は再び安全な金に流れる。」

(こうした影響を報じる記事も。ただ一方で、金投資の人気は増税前の駆け込み需要の一つに過ぎない、という意見もある。)
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7)残業文化変えないとアベノミクス失敗? 女性の雇用、健康問題… 海外メディア指摘

 労働力人口減少の危機に直面している日本は、貴重な人材を失うことを何としても避けなければならない。種々のハラスメント、いじめ、長時間労働から労働者を守る法律が制定され施行されるなら、日本の労働力不足を解消できる、と海外メディア『Lexology』は指摘している。

 日本の若者は働きすぎで疲れ果てている、と同調査を取り上げたウォールストリートジャーナルは指摘している。

(長時間労働は度々海外メディアで問題視されている。女性の活躍を阻む種々の壁を壊せれば、より経済成長につながるという議論も度々出ている。)
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8)経済低迷EUは「日本に学べ」 アベノミクス改革の方向性を米誌が評価

 カタール英字紙『ガルフ・タイムズ』に寄稿したドイツのエコノミスト、ミヒャエル・ハイゼ氏は、日本が犯した最大の過ちは構造改革に失敗したことだと見ている。同氏は既得権益層を中心とした抵抗勢力の力が強い「難しい政治環境」がその要因だとし、「大きな支持率を得ている安倍政権ですら、農業や労働市場の改革では苦労している」と記している。

 タイム誌も改革への激しい抵抗が「日本を本当に殺した要因」だと指摘する。2000年代初めの小泉改革による規制緩和の流れの一方で、「日本の政治家たちは政治的にデリケートな改革のほとんどを避けてきた」と批判。ヨーロッパでは日本よりはわずかに進んでいるものの、ユーロ圏内の統一的な規制緩和など、手付かずの基本的な改革も多くあると記している。

(日本の失敗を例に、EU経済を懸念する論調も昨今増えてきた。アベノミクスの行方次第で、こうした議論の流れも変わるだろう。)
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Text by NewSphere 編集部