朝日“アベノミクス、このままだと失敗” 海外紙“まだ判断は早い” 各紙の指摘する課題とは?

 17日発表された10~12月GDPは、前期比0.3%(年率1.0%)増で、年率3%前後の成長が予想されていたのに対し、期待外れと言えた。アベノミクスは結局、借金を増やした大盤振る舞いというだけで終わるのであろうか?

【伸びない賃金と将来への不安】
 アベノミクスは、円安やインフレの誘導には成功している。しかし1年で物価が1.3%上がる間に、労働者の収入は0.8%しか上がっておらず、それもボーナスや残業代など、その場限りのものが中心だ。

 ロイターのコラムでジェームズ・サフト氏は、実質収入の下落を感じる人が増えていることや、デフレが猛威を振るってきた国にもかかわらず80%以上の人が昨年の物価上昇を「好ましくない」と見ていたとする、日銀の世論調査結果を指摘する。ウォール・ストリート・ジャーナル紙が引用した独立専門家アンドリュー・スミザーズ氏も、デフレが苦境の原因だからインフレ化しようという発想自体がそもそも誤りであって、かえって支出を冷え込ませる結果になると主張する。苦境の主な原因はむしろ、企業が内部留保をし過ぎている事なのだという。

 朝日新聞のコラムも、物価が上がっても雇用や社会保障不安が消えなければ消費や設備投資には結びつかないと説く。そこで引用されているところでは、IMFは今年の日本の成長率を1.7%、消費税増税時に刺激策が導入されても来年は1.0%に鈍化すると見ており、ブランシャール調査局長は刺激策や輸出頼みではなく、消費と投資が引っ張る形にすべきだと提言している。

【構造改革の成否に命運かかる】
 タイム誌は、金融緩和や政府支出による現金の大洪水だけではなく、アベノミクス第3の矢である構造改革こそが必要なのであって、安倍首相もそれは判っているが、実現の歩みは遅々としていると述べる。「競争や投資を阻害する官僚的干渉やお役所仕事を排除できるほど大胆」な規制緩和が必要であるし、日本は人口高齢化に伴って、移民や女性の労働力参加を必死に進める必要に追い込まれているはずなのに、「過度に統制された労働市場は、労働者を隙間仕事やアルバイトに追いやっている」という。また企業自身にも、技術革新、新規事業を引き受けるリスクテイク、外部への経営の透明化、といった改革が必要だとのことである。

 朝日新聞コラムも、来年消費税を10%に上げる予定のため、自民党や経済界から一層の大規模公共支出を求める声は上がるであろうが、雇用・福祉面などの抜本策がなければ、バラマキ頼みは長続きしないと断じた(なぜか脱原発・エネルギー政策の転換も挙げられている)。このままでは、小泉政権下の「実感なき景気回復」の焼き直しにしかならないと警告する。

 しかし、そうした改革については、与党・自民党内にさえ意見の分裂がある。ロイターのサフト氏は、そうした改革を円滑に推進するには、「最初の2矢」である金融緩和や政府支出をもっと成功させて見せなければならないという。

【切り捨てるのはまだ早い】
 それでもタイム誌は、アベノミクスはまだ経済大実験の途上と評しているし、ウォール紙の記事も主旨としては、アベノミクスを失敗と決めつけるのはまだ早いというものである。日銀は18日の政策会議で、基本路線を変えてはいないが「銀行融資に拍車をかける」新政策を打ち出し、経済成長維持への決意を見せた。また、成長率がパッとしないのは高齢化で労働人口比率が落ちているからであって、労働人口あたりで見れば日本は充分着実に成長しているという。

虚構のアベノミクス――株価は上がったが、給料は上がらない

Text by NewSphere 編集部