トランプ時代の企業のあり方

© Yumiko Sakuma

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 2016年のアメリカ大統領選挙で、経営者でリアリティ番組スターのドナルド・トランプが大統領に選出されたことはアメリカで大きなショックを巻き起こした。その背景や理由を解説し始めるとキリがないが、ニューヨークやカリフォルニアのプログレッシブな有権者たちにとっては、移民、女性、人種マイノリティ、性的マイノリティ(LGBTQ)の権利拡大に反対する、共和党の支持基盤の中でもウルトラ保守と言ってもいい層に支持された候補が大統領になった、という事実が、新たな現実と課題を作り出したのである。

 大統領選挙が終わったそばから、ミレニアルたちの社会運動は急激に活発になった。

 印象深いエピソードがひとつある。トランプ大統領は、2017年に就任してすぐ、一部のイスラム教国のパスポートを持つ人々の入国を制限するという方策に出た。この政策が発表されたニューヨークではすぐに、都市の玄関として機能するジョン・F・ケネディ空港でデモが始まり、タクシー運転手たちが同空港への乗り入れを拒否するボイコット運動を始めた。すると同じタイミングで、タクシー配車サービスアプリのウーバーが、ケネディ空港に乗り入れる車の料金のディスカウントを発表した。ウーバーはこのタイミングについて偶然だと主張したが、ウーバーに対するアプリ削除というボイコットが始まった。

 これを受けてニューヨークでは、ウーバーの次に市場シェアを持つ競合アプリのリフト(Lyft)が、入国制限政策に反対する訴訟を起した人権団体「アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union)」へ100万ドルを寄付したことを明らかにして、ウーバーをボイコットしたユーザーたちがリフトに殺到した。ところがすぐに、リフトの大型株主の一人が、トランプに多額の寄付をしてアドバイザーも務めた投資家カール・アイカーンだということが報じられた。そしてさらには、ドライバーが支払うコミッションをウーバーやリフトよりも10%ほど低く設定するJuno(ジュノ)という会社の存在が、ウーバーもリフトも使いたくない消費者たちの受け皿としてクローズアップされた。

 ジュノはウーバー、リフトと同様のタクシー配車アプリではあるが、 コミッションを低く設定することでドライバーの取り分を多くするだけでなく、ドライバーたちが株式の一部を持てる仕組みも整備したソーシャル・エンタープライズ(社会企業)を目指して2016年に創業した。大企業が利益をあげるために労働者が搾取されるのではなく、企業が利益を上げれば、その分が労働者に還元されるという考え方に基づいている。これについてはまた後日、詳しく書きたいと思う。

 余談になるが、ジュノは結局2017年にイスラエルの配車アプリ、ゲット(Gett)に買収され、株式供与プログラムは廃止されてしまった。けれどジュノのアプリは今も運用されており、ドライバーのコミッションは他社よりも高く設定されている。

Text by 佐久間 裕美子

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