アマゾンの話
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少し話は前後するけれど、ドナルド・トランプが大統領選挙に勝利した2016年11月、各ソーシャルメディアに「スリーピング・ジャイアンツ」というアカウントが登場した。トランプ大統領を支持し、ナショナリズムの台頭を煽った極右のニュースサイト、ブライトバートに広告を出す企業にプレッシャーをかけるために、市民の拡散力を利用した、ソーシャルメディア・アクティビズムのアカウントである。
あっという間に万単位のフォロワーを持つアカウントに成長したスリーピング・ジャイアンツは、ネイティブアドの広告を購入し、知ってか知らずか結果的に極右サイトにバナーを出している企業に、「あなたの企業のバナーが極右サイトに出ているのを知っていますか?」と声をかけていく。それが市民たちによって拡散されて、企業が対応を強いられる、という構図によって、何百社という企業のブライトバートへの出稿停止を実現した。
スリーピング・ジャイアンツがターゲットとした企業の中にアマゾンがあった。スリーピング・ジャイアンツは、アマゾンの利用者たちを巻き込んでキャンペーンを実施し、アマゾンの社内からも、ブライトバートへの出稿に反対する有志たちが経営陣に手紙を出す事態に発展した。それでもジェフ・ベソス以下アマゾンの経営陣はどこ吹く風で無視を決め込んだ。 ジェフ・ベソスは出稿先の主義主張は厭わない方針のようだ。
前回書いたように、私は隣人で黒人のマーヴィンの「使わない宣言」に感化されて、アマゾンで物を買わなくなった。また、まわりを見回してみると、「使わない」と口に出す人がポツポツと出てきた。それでも全体的にいえばこういうタイプは例外的な少数派で、多くの人がアマゾンの功罪に無頓着なことを、運送業者が路上で抱える箱のロゴや自分が暮らすビルの玄関に届く大量の荷物に感じ取っていた。クリックすれば次の日には商品が届く、その便利さにみんなが慣れきってしまって、いまさらアマゾンのない生活には戻れないのだろうとぼんやり思っていたのだ。
そんな今年の春、アマゾンが、かねてから計画していたシアトル本部の次の第二本部をニューヨークに作る、という発表があった。アマゾンは昨年、第二本部建設計画の発表とともに、100万人以上の都市であること 、公共交通機関が充実していること、国際空港があることなどを条件に、全米の都市に立候補を呼びかけていた。アマゾンの第二の拠点がもたらす雇用に期待を寄せた自治体は少なくなかった。デンバー、ミネアポリス、オースティン、デトロイト――200以上の中堅都市が名乗りを上げ、地方政治家たちがこぞってアマゾンにインセンティブを差し出した。
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