食ブームのメインストリーム化
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ブルックリンには、〈スモーガスバーグ〉という人気イベントがある。〈ブルックリン・フリー〉という蚤の市の運営団体が2012年に、少量生産志向の食のアルティザンたちを集めて始めた食専門のマーケットである。自然な製法や天然および有機素材にこだわった作り手たちが無数に並ぶこのマーケットは、ブルックリンの食いしん坊たちにまずは発見され、 あれよあれよと人気を伸ばし、今や国際的な一大観光スポットに成長した。ブルックリンの川沿いの公園で始まったこのイベントはその後、規模を拡大しただけでなく、他の地域でも衛星イベントを行なうなど、今ではブランド化に成功したと言って間違いないだろう。
前回書いたように、インディーから始まった作り手たちの一部は大企業に買収された。けれど、食のアルティザン文化の中には「買われる」という以外にも数タイプの「成功」を手にした人たちもいる。
たとえば〈スモーガスバーグ〉のような市場でブースを持っていた作り手が、そこで売上を重ねて資金を貯めたり、注目されたことで投資家を得たりして、ときにはトラックのベンダーとしての時期を経て、最後には実店舗を出した、というサクセス・ストーリーがある。
またもうひとつ、「フードホール」と呼ばれる新しい形態のスペースに誘致されて、ブースや支店を出すことに成功した作り手も少なくない。
それまでもアメリカには「フードコート」というカルチャーがあった。ショッピングモールや空港などでお馴染みの、広場を中心にファストフードやテイクアウトのチェーン店が立ち並ぶ営業形態のことだ。サービスなしの気軽さ、団体で来てもそれぞれが好きなものを食べられるところが売りだった。とはいえ、「フードコート」という言葉には、どこかチープな響きが漂う。その安いイメージを払拭しようと、イギリス発祥の言葉を借りて登場したコンセプトが、「フードホール」である。
ニューヨークだと、2010年にプラザホテルの中にできたフードホールが成功を収め、その後にスモーガスバーグに象徴されるようなアルティザン・ブームによって、過去5年ほどのあいだにフードホールが急に増えた。チェーン系の店が並ぶ「フードコート」と違って、「フードホール」は独立系地元密着型のレストランやショップが、たとえばストリート系、多国籍系などというようにテーマに合わせてキュレーションされていて、マイクロ商店の味方、というイメージ形成された。多くの場合、大型のコミューナル(共同)テーブルが配置され、他の客とのあいだの垣根が低い設定もまた時代の空気と合っていたのだろう。あっという間に人気の新ビジネスとして急増し、ビル内にフードホールをアメニティとしておく新築の住宅ビルまで登場した。
この流れはアメリカ全土に飛び火し、2015年に全米で70箇所あったフードホールが、2017年には118軒箇所に増え、ディベロッパーのクッシュマン&ウェイクフィールドによると、2020年には300箇所を超える見通しだという。
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