アメリカ人漫画家のジジ・ムラカミさん 外国人が描く漫画はどんなもの?

例年多くの来場者で賑わっている、日本のコミックマーケット(通称:コミケ)。

2024年5月、カナダのトロントで開催されたコミックイベント、トロント・コミック・アーツ・フェスティバル(Toronto Comic Arts Festival)では、多くの人が訪れ、賑わいを見せていました。



【動画】ジジ・ムラカミさんが描く、作品の深いテーマ

カナダ版「コミケ」ともいうべき同イベントに、今年は約350の作家や出版社が出展。

会場は、訪れた人に自身の作品を紹介する作家たちの姿であふれ、熱気が冷める様子はありませんでした。



今回はイベントに参加されていた出展者のジジ・ムラカミ(Gigi Murakami)さんに話を伺いました。


TCAF出展者の漫画家ジジ・ムラカミさん


ジジ・ムラカミさんはアメリカのニューヨーク州出身のホラー漫画家・イラストレーターです。


子供のころからホラーやコミックを描くことが好きだった彼女は、2018年にフリーランスの漫画家としてキャリアをスタート。



「『NANA』や『NARUTO』など日本の漫画をたくさん読んできました」とジジさんは話します。

好きな日本人漫画家は「AKIRA」の大友克洋さんや「パプリカ」の今敏さん、「ベルセルク」の三浦健太郎さんなどだそうです。


また「うずまき」の伊藤潤二さんや「20世紀少年」の浦沢直樹さん、日本人アーティストのロッキンジェリービーン(Rockin’ Jennly Bean)から影響を受けたとのこと。


ジジさんは、2022年にホラーシリーズ「Resenter(レゼンター)」を自費出版しました。


突然何者かに命を奪われたジャッキーという女性が、生と死の間でリアと名乗る女性に出会います。

そしてリアから3つの選択肢を提案されたジャッキーは、復讐代行人になることを選択。

同じように命を奪われた人たちに代わって、リベンジを行うという「復讐は必要か?」をテーマにした物語です。


先日のトロントのコミックイベントでも、ジジさんはこの作品を出展していました。

海外で開催されるコミックイベントの特徴


1年に5回ほど北米のコミックイベントに出展者として参加しているジジさん。

最初にイベントに参加したのは、10年ほど前とのこと。


年々、各コミックイベントの人気度は高まっているといいます。


そのためジジさんは「入場の列に並ばなくてもいいことが、出展者としてイベントに参加する楽しみのひとつです」と冗談交じりに明かしました。


2021年にアメリカで行われたアニメイベント「Anime NYC」では、一般参加者は入場に3時間かかったのだとか。

海外での漫画人気が高くなるにつれ、コミックイベントの参加者数も増加し、入場にも時間がかかるようです。

ジジさんは「本当に楽しみなのは、他の出展者のテーブルを見ることです。さまざまな作品スタイルがあり、多様性にあふれています。また他のアーティストたちと繋げれることも楽しいです」と話します。

また「最近はパネルディスカッションから得られるものが多いと感じるようになりました」と続けました。

出展者は他のアーティストとの出会いを通して、お互いの作品から刺激を受けたり、ネットワークを広げたりしてイベントを楽しんでいるのでしょう。

ジジ・ムラカミさんが抱く日本での目標

ジジさんは日本のコミックイベントは未経験とのこと。

「旦那さんが日本人なので、何度か日本を訪れたことはありますが、コミックイベントには参加したことはありません。日本でも出展してみたいです」と希望を語りました。

もし日本のイベントに参加するなら、オンラインを通して知り合った日本人の漫画家たちに会ったり、好きな漫画家を見に行ったりしたいそうです。

「出版社に頼らず成功している同人誌の漫画家もいると聞きました。個人だけで全てをやりくりする方法などを聞いてみたいです」といい、日本のインディーの漫画家を参考にしたいと話します。

日本のコミックイベントに参加して、日本の漫画文化をさまざまな角度から知りたいと思う海外の漫画家も多いかもしれません。

ジジさんが会いたいと思う漫画家は「とんがり帽子のアトリエ」の白浜鴎さんと「ダンジョン飯」の九井諒子さんでした。

「トロントのコミックイベントでの白浜さんのサイン会は抽選に外れてしまったんです」と、ジジさんは残念そうに明かします。

彼女の将来の目標は、日本で漫画を出版することだそうです。

「日本の働き方は海外とは違うので、少し不安ですが、日本の出版社から漫画を出してみたいです。」と話します。

さらに「日本に移住して、自分のスタジオを持ちたいです」と続けました。

日本の漫画から影響を受けた海外の漫画家は少なくありません。

またジジさんのように、日本で漫画を描くことを目標にしている人も多いでしょう。

日本のコミックイベントでも、作品スタイルの多様性だけでなく、さまざまなバックグラウンドを持つ作家たちの参加が増える日がくるかもしれないですね。

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Text by 島田 そら