トランプ氏、史上初「3度目の弾劾」も? 民主党の下院奪還で現実味
大統領専用機に搭乗するトランプ米大統領(8月16日)|Julia Demaree Nikhinson / AP Photo
11月のアメリカ中間選挙で民主党が下院の多数派を奪還すれば、ドナルド・トランプ大統領が史上初となる3度目の弾劾訴追を受ける可能性が浮上する。
民主党はすでに、下院奪還後を見据えてトランプ政権に対する大規模な調査の準備を進めている。一方、党内には弾劾より物価や生活費の問題を優先すべきだとの慎重論もある。さらに、下院で弾劾訴追が決まったとしても、実際にトランプ氏を罷免するには上院の3分の2の賛成という高い壁が待ち受けている。
◆民主党の下院奪還、確率67%
選挙予測サイトのDecision Desk HQ(DDHQ)が9月3日に更新した予測では、中間選挙で民主党が下院の多数派を獲得する確率は67%、共和党が維持する確率は33%となっている。一方、上院は民主党49%、共和党51%で、ほぼ五分五分だ。
選挙分析サイトのクック・ポリティカル・リポートも8月25日時点で、下院435議席のうち民主党が優勢な選挙区を205、共和党が優勢な選挙区を209と評価。残る21選挙区を「Toss Up(五分五分)」としており、そのうち16議席は共和党の現有議席だ。
こうした情勢を受け、政治専門紙ヒルのクリス・スタイアウォルト氏は9月2日、「トランプ氏の3度目の弾劾は不可避に見えるが、どのようなものになるのか」と題する分析記事を掲載した。DDHQなどの予測をもとに、民主党による下院奪還の可能性が高まっているとし、焦点は弾劾そのものの有無だけでなく、その後の上院での展開になると論じている。
大統領の弾劾訴追は、下院で過半数の賛成があれば決められる。このため民主党が下院を奪還して結束すれば、共和党の賛成がなくても弾劾訴追を決めることが制度上可能になる。ただし、その後の弾劾裁判で大統領を罷免するには、上院で出席議員の3分の2の有罪票が必要だ。
◆トランプ政権への調査、すでに準備
実際、民主党は下院奪還後を見据えた動きを始めている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が8月21日に報じたところでは、下院民主党の議員や側近は、トランプ政権に対する複数方面からの調査を準備している。
初期の調査対象として検討されているのは、イラン戦争への対応、トランプ氏と家族の事業、ホワイトハウス舞踏室の建設、故ジェフリー・エプスタイン氏との関係、移民当局の活動など約10項目。下院監視委員会の民主党トップ、ロバート・ガルシア議員は、委員会メンバーが夏の間に会合を開き、調査方針を詰めていると明らかにした。
ホワイトハウス側も、民主党の下院奪還を警戒している。ホワイトハウスの法律顧問らは閣僚や政府高官に対し、どのような召喚状を受ける可能性があるか、その場合どう対応するかについて説明を行っているという。
ただし、こうした調査を3度目の弾劾につなげるかについて、民主党内の足並みはそろっていない。下院民主党トップのハキーム・ジェフリーズ院内総務は8月25日、CNNのインタビューで、弾劾について「何も決めていないし、何も排除していない」と述べた。アクシオスによると、党内ではトランプ氏への積極的な責任追及を求める議員がいる一方、過去2回に続く弾劾に再び踏み切ることに慎重な議員もおり、ジェフリーズ氏は難しいかじ取りを迫られる可能性がある。
弾劾を求める動きもすでに具体化している。アクシオスは4月、一部の民主党議員が下院奪還後の「初日からの弾劾」を見据え、今の段階からトランプ氏を弾劾する根拠を積み上げるよう同僚に働きかけていると報じた。昨年6月に弾劾決議を前進させることに賛成した民主党議員は78人だったが、12月には140人に増えた。
その一方、民主党重鎮のジム・クライバーン下院議員はNBCの番組で、民主党が下院を奪還しても弾劾を優先すべきではないと主張した。住宅や教育、エネルギー、医療を手ごろにすることを優先すべきで、「大統領を弾劾しても、それは実現しない」と説明。ただし、弾劾そのものを選択肢から排除したわけではない。
◆最大の壁は上院 罷免は極めて困難
仮に民主党が下院を奪還し、トランプ氏を3度目の弾劾訴追したとしても、罷免は別問題だ。
上院議員100人全員が弾劾裁判に出席すれば、有罪には67票が必要となる。2021年の2度目の弾劾裁判では、共和党議員7人が民主党側に加わって有罪票を投じたが、合計57票にとどまり、必要な票数には10票届かなかった。
今回の中間選挙では、民主党が上院で議席を増やしたり、多数派を奪還したりする可能性もある。しかし、過半数を確保することと、弾劾裁判で必要な3分の2に達することには大きな隔たりがある。このため、民主党が下院で3度目の弾劾訴追に踏み切ったとしても、実際にトランプ氏を罷免するハードルは極めて高い。
より現実味があるのは、まず議会の調査権や召喚権を使ったトランプ政権への追及が本格化する展開だ。そこで何が明らかになるのか、そして民主党が生活費対策とのバランスをどう取るのかによって、史上初となる3度目の弾劾に踏み切るかどうかも決まりそうだ。




