オバマ元大統領の記念館はなぜ「図書館」ではないのか シカゴに異例の施設
シカゴで開かれたオバマ大統領センターの開館記念式典(6月18日)|Jon Cherry / AP Photo
アメリカのオバマ元大統領の記念館「オバマ大統領センター」がシカゴに開設された。これまで通例となっている、大統領任期中の記録を保管・公開することを主目的とした場所ではなく、民間の財団が管理する地域に開かれた施設として注目が集まる。
◆オバマ夫妻に縁のあるシカゴに開設
6月19日、シカゴ・サウスサイドに「オバマ大統領センター」が一般公開された。前日の18日に行われたオープニングセレモニーには、現職のトランプ大統領は招かれず、クリントン夫妻、ブッシュ夫妻、バイデン夫妻が出席。オプラ・ウィンフリー、トム・ハンクス、スティーブン・スピルバーグなど各界の著名人らも参加した。式典では、スティービー・ワンダーやブルース・スプリングスティーンをはじめとする10組以上のアーティストによる豪華なパフォーマンスが展開された。
ジャクソン公園内の19.3エーカー(約7.8万平方メートル)の敷地にオープンした施設は「キャンパス」と呼ばれ、多様なパブリックスペースが設けられている。メインの建物である「オバマ大統領センター博物館」をはじめ、オーディトリアムや録音スタジオが入った「フォーラム」、NBA規格の室内バスケットコート、公共図書館、果樹・菜園、子供の遊び場、ピクニックができる芝生エリアなどがある。博物館や特別なイベントへのアクセスを除き、施設は無料開放されている。
サウスサイドはバラク・オバマ、ミシェル・オバマ両氏にとって縁の深い地だ。ミシェル氏が生まれ育った地であり、バラク氏がコミュニティオーガナイザーとして政治活動を開始した場所でもある。そしてシカゴには、2008年11月4日、大統領選挙を制したバラク氏が約24万人を前に勝利演説を行ったグラント・パークがある。
◆元大統領が開館した類例のない施設
アメリカでは元大統領の功績をたたえ、任期中の記録資料を保管・公開する図書館を開館するのが通例だが、今回オープンした施設は過去の「大統領図書館」とは異なる。「初代デジタル大統領」として文書などのデジタル化の流れを象徴するオバマ元大統領。メールなど15億ページに及ぶ記録は主にデジタルで作成されたため、紙資料を中心に所蔵する従来型の大統領図書館とは異なる形が取られた。国立公文書記録管理局(NARA)の一部であるバラク・オバマ大統領図書館はメリーランド州カレッジパークにあり、閲覧室は設けられていないが、デジタル化された資料は公開されている。他方、オバマ大統領センター内にある地域のための公共図書館には、オバマ夫妻の選書を扱った「大統領の読書室」が設けられた。
センター開館にあたっては、28点を超える委託アート作品も注目された。ナイジェリア出身・ロサンゼルス在住の画家、ジデカ・アクーニーリ・クロスビー(Njideka Akunyili Crosby)は、オバマ夫妻を描いたポートレート作品を制作。家族写真や歴史的・文化的に意義深いアーカイブ画像などを織り込んだ、重層的な作品となっている。博物館の外壁を彩るのは、エチオピア系アメリカ人アーティスト、ジュリー・メレツ(Julie Mehretu)が、オバマ元大統領によるセルマ大行進の50周年記念演説に着想を得て制作したガラスを用いた大型インスタレーション。イギリス人アーティストのイドリス・カーン(Idris Khan)は、公民権運動のリーダーをたたえるオバマ元大統領の演説の言葉を手押しスタンプの手法で重ね、博物館の天井を埋め尽くした作品『希望の空(Sky of Hope)』を手がけた。
オープニングセレモニーの演説で、オバマ氏はこの施設を「生命のない霊廟」のような場所ではなく、地域社会を祝う生きた場にしたかったと説明した。さらに、アートや音楽、スポーツ、遊びの喜びを分かち合うことで共通の人間性を思い出し、民主主義を強くする場所にしたいとの考えを示した。また、この施設はオバマ政権を支えた公共に尽くす人々の功績をたたえる場でもあると述べた。
自分の功績をたたえるだけでなく、「あるべきアメリカの民主主義」を発信し、人々を現在進行形でインスパイアし続けるという役割を持つオバマ大統領センター。変革と希望のメッセージを唱え続けるオバマ元大統領のビジョンとアイデンティティが反映された、未来志向の施設に期待が高まる。




