ニューヨーク、富裕層の別宅に課税へ 500万ドル超の「空に浮かぶ貸金庫」に照準

Miroslav Srb / Shutterstock.com

 ニューヨーク市のゾラン・マムダニ市長とニューヨーク州のキャシー・ホウクル知事は、ニューヨーク市内の評価額500万ドル(約8億円)以上のセカンドハウスに追加課税する計画を発表した。市議会や州議会の指導部は支持を表明しているが、不動産業界は猛反発している。

◆富裕層への課税手段 市長の選挙公約実現?
 「セカンドハウス税」は、主たる居住地ではない所有者が保有する、評価額500万ドルを超える高級セカンドハウスが対象。通常の不動産税に加えて追加で課される年間課税で、実現すれば初の本格的な課税となる可能性がある。

 マムダニ氏はニューヨーク市長選に出馬した際、富裕層への課税を公約としていた。本来、個人所得税や法人税こそが富裕層への課税を増やす「最も直接的な」手段だとしながらも、セカンドハウス税は、自身の取り組みにおける重要な一歩だとしている。(ブルームバーグ

 米メディアによれば、12年前に当時の州上院議員が、市内の空き家となっている高級分譲マンションに高額な税を課す法案を提出した。ところが不動産業界から激しい抵抗を受け頓挫。以来この案は何度も浮上しては廃案となり、「進歩的な空想」とみなされてきた。しかし現在は市の財政赤字を埋め、所得格差を是正するための「常識的な計画」として、マムダニ氏が熱望する富裕層への広範な課税よりもはるかに穏健な歳入増加策と期待されている。この税により、市は年間5億ドル(約800億円)の歳入増を見込んでいる。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、ニューヨーク市議会議長や州上下院の指導者たちもセカンドハウス税を支持しているという。

◆数百億円なのに空き家! 相応の負担は妥当
 マムダニ氏は、セカンドハウス税により一般のニューヨーク市民が住宅を取得しやすくなり、市民サービスの改善も行うことができると主張している。多くが空きがちなセカンドハウスの富裕層所有者については、相応の負担をせずに市のサービスの恩恵を受けていると批判した。

 米メディアによれば、この税の重要性を強調するため、マムダニ氏はヘッジファンド、シタデルのケン・グリフィン氏が所有する2億3800万ドル(約380億円)、約2230平方メートルのペントハウスを典型例として挙げた。この物件は2019年の成約時点でアメリカの史上最高額で売却された住宅だが、各地に不動産を持つグリフィン氏は、自身がニューヨークにいるときの滞在先としてこの物件を購入したと報じられている。

◆トランプ氏も批判 州政治家は支持
 セカンドハウス税に、ニューヨークの超富裕層と不動産業界は猛反発している。そもそも超富裕層は巨額の増税を警戒し、マムダニ氏の市長選勝利を阻止しようと動いていた。その一人でヘッジファンドの億万長者、ダニエル・ローブ氏は、Xの投稿で市長が階級闘争を煽っていると非難。トランプ大統領も、マムダニ氏がニューヨークを破壊していると自身のプラットフォーム、トゥルース・ソーシャルで批判した。(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)

 不動産業界は、セカンドハウス税導入で購入者がニューヨークから離れていけば、建設作業員からハウスキーパー、デザイナーに至るまで、都市で金を使う富裕層を支える普通のニューヨーカーたちに影響が及び、市の経済弱体化につながると主張している。一方、一部の不動産仲介業者からは、これまでもさまざまな懸念事項は結局払拭されており、この税による市内の不動産取引量に影響はないだろうという声も出ている。(FT)

 NYTは、巨大でほとんど空室のマンションを「空に浮かぶ貸金庫」と呼んでいる。ホウクル知事は記者会見でこの表現に触れ、そのような住宅は街の景色の一部だが、そこに住む人々は私たちの街の一部ではないと述べている。

Text by 山川 真智子