「トランプ氏出馬不可」のコロラド州最高裁が仕掛けた「罠」とは?

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 米コロラド州最高裁は19日、共和党から2024年大統領選に出馬しているドナルド・トランプ前大統領が「大統領になる資格がない」とし、同州の共和党予備選投票用紙からトランプ氏の名前を削除する判断を下した。トランプ氏が2020年1月6日の議会襲撃事件に関わったことが、南北戦争後の1868年に制定された合衆国憲法修正第14条3項に抵触するとしている。同州最高裁の判断の裏には何があるのだろうか。

◆政府への反乱関与で出馬資格なし?
 トランプ氏の出馬資格に関しては、以前から民主・共和両党から疑問視する声が挙がっていた。今年1月には、共和党大統領選予備選に出馬していたエイサ・ハッチンソン前アーカンソー州知事がABCニュースのインタビューで「トランプ氏は1月6日事件の関与で大統領になる資格がない」と発言。そして8月にはアトランティック誌に著名な憲法学者であるハーバード大学のローレンス・トライブ教授と、共和党政治家に強い影響力を持ち、同じく憲法学者でもあるマイケル・ルティグ元米連邦高等裁判所判事が、憲法修正第14条3項を理由として「合衆国憲法はトランプが再び大統領職に就くことを禁じている」と題した記事を共同執筆した。

 争点となっている合衆国憲法修正第14条3項(アメリカンセンター訳)には、「連邦議会の議員、合衆国の公務員、州議会の議員、または州の執行部もしくは司法部の官職にある者として、合衆国憲法を支持する旨の宣誓をしながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院および下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない」と記載されている。

 実際にニューメキシコ州では、1月6日の議会襲撃事件に参加したとして公職者が追放された例もあり、憲法をそのまま解釈した場合はこの条項がトランプ氏にも当てはまる。しかし、現在91件の容疑で起訴されているトランプ氏だが、これまで兵役を含むさまざまな責任を回避してきたことに加え、前大統領という身分もあるため、多くの人々はコロラド州最高裁がトランプ氏に憲法修正第14条3項をストレートに適用するとは予測していなかった。

Text by 川島 実佳