新時代のリーダー像示したアーダーンNZ首相 一貫したスタイルと決断力

Mark Mitchell / New Zealand Herald via AP

◆アーダーンの一貫性
 アーダーンは18歳で労働党に入党。大学卒業後は、選挙によって選ばれたニュージーランド初の女性首相ヘレン・クラークの元でアドバイザーとして働いた経験も持つ。2008年にニュージーランド議員に当選。2017年10月に37歳で首相の座に就いた。当時、世界で最も若い女性の首相として注目を集めた。

 在任中は、2019年3月のモスク襲撃事件、同年12月のホワイト島噴火、新型コロナウイルスのパンデミックなどさまざまな人災や天災に対応し、国民に寄り添ったスタイルで国を率いてきた。モスク襲撃事件の後は銃規制を強化し、軍隊式の半自動小銃を全面的に規制し、6万2000丁以上を政府が買い上げた。パンデミック対応でも迅速な決断とわかりやすい説明で世界のメディアから注目された。2018年6月には長女を出産し、ワークライフバランスを体現するロールモデルとしても認識された。

 アーダーンの辞任は驚きを持って受け入れられたようだが、ほかの政治家が見習える部分があるとの見方もある。昨年の世論調査では、アーダーンは好ましい首相のカテゴリーではトップであったもののその支持率は29%と、2017年以降で最も低い数字を示していた。また、近年、アーダーンは反対する過激な勢力から脅しも受けていた。政治的・戦略的な背景が皆無であったとは考えにくいが、スキャンダルや選挙戦のプレッシャーなどではなく、自らの決断で退任するという点は評価に値する。「燃え尽きた」という報道もあった彼女の辞任の背景は、メンタルヘルスを大事にすることの重要性をさらに後押しする効果もありそうだ。

 アーダーンは辞任表明の記者会見で、家族に感謝の意を示すとともに、子供とともに過ごすことを心待ちにしていると述べ、そしてパートナーに対して「ようやく結婚しよう」というメッセージを伝えた。アーダーンが示した率直さや人間性は、これからのリーダー像を印象づけるものだ。

Text by MAKI NAKATA