トランプ派の郵便公社総裁を罷免へ バイデン大統領の「追放シナリオ」
毎年11月後半の感謝祭後、暮れも押し迫る頃になるとアメリカのあちこちで見られる光景がある。それはクリスマスプレゼントを送るために、郵便局に並ぶ人々の長い列だ。ハワイからアメリカ本土に送る場合でも、従来なら優先郵便(プライオリティメール)の場合は4日から1週間前後で到着したものだが、去年に続き、今年もその目安が信用できない。それは、トランプ前大統領が米郵便公社の総裁に指名したルイス・デジョイ氏の就任後、郵便の遅れが著しいからである。しかも今年はクリスマス時期のみ郵便料金を値上げするという。
◆郵便公社との利益相反関係
昨年5月に郵便公社総裁に就任したデジョイ氏は、2020年の大統領選挙前に、街頭の郵便ポストを撤去したり、故障したわけでもないのに多数の郵便選別機を破壊したりする命令を出すなど、郵便公社の業務を妨害しているとしか思えない行動をしてひんしゅくを買っていた。
NBCニュースによると、デジョイ氏は以前XPOロジスティックスという運輸会社の最高経営責任者を務めた経験があるが、政治監視団体が暴いた事実によると、同氏は郵便公社の事業と関係を持つこの会社、およびほかの13社に投資を行っており、利益相反関係にあるという。つまり、同氏は必ずしも郵便公社の利益を念頭に置いて行動しているわけではない可能性も高いのだ。
しかもそれだけでなく、CBSニュースによると、デジョイ氏は選挙資金調達に関する違法行為で連邦捜査局の捜査も受けている。
そんな人物がどうしてトランプ前大統領の退任後も総裁として居座り続けているのか、と疑問に思う人も多いかもしれない。その理由は、バイデン大統領には郵便公社総裁を直接罷免する権限がないからだ。デジョイ氏を総裁に指名したのはトランプ氏だが、総裁を罷免する権限を持つのは理事会である。郵便公社によると、現在9人の理事がおり、任期が切れると大統領が理事を新たに指名し、上院で承認投票が行われる仕組みとなっている。この9人のうち、これまでは共和党寄りの理事が多数派を占めていたため、民主党や国民の圧力があるなかでもデジョイ氏が総裁として残ることができていたのである。
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