東京オリンピック絶対開催の理由、海外メディアが指摘

Eugene Hoshiko / AP Photo

◆無観客なら税補填 スポンサーも苦悩
 専門家は、開催なら感染拡大を防ぐため無観客で、と助言しているが、政府は人数制限をしても観戦客を入れようとしている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、ここにも経済的理由があると指摘する。最近発表された東京大会のバランスシートでは、前受金として1183億円の負債が計上されていた。そのほとんどは、約2年前に受け取った日本国民からのチケット代金だ。もしも無観客開催となれば、延期された大会開催の費用支払いを保証することに合意している東京都が実質チケットの払い戻しをすることになり、税金で賄われることになるだろうとFTは述べている。

 さらにスポンサー企業にとっては、昨年の大会前に行った消費者向けキャンペーンの当選者を参加させられるかどうかが大問題となっており、これらのチケットがキャンセルされれば多くの反発に直面すると関係者は恐れているという。(FT)

◆開催でもモヤモヤ 識者の意見は
 もっとも政治専門紙ヒルに寄稿したハドソン研究所のライリー・ウォルターズ氏は、経済的な利益以外にも目を向けよと述べる。今年はとくにステイホームをする人々に必要な気晴らしを与えると同時に、パンデミックの終わりに光が見えそうなことを世界に示す大会になるという点から、開催継続を支持している。

 一方ほかの識者のなかには、複雑な思いがあることをAPが伝えている。フォーダム大学のマーク・コンラッド氏や社会学者のヘレン・ジェファソン・レンスキー氏は、パンデミック下の東京大会でも、IOCがすべての権限を持つという事実が変わらなかったことを憂いている。

 筑波大学の礪波亜希氏は、政府内の人々は五輪を実現するよう指示され、できる限り失敗せず乗り切ることが望みだと聞いているとした。政治家はひとたび大会が始まれば、国民は「日本のために」これまでの経緯を忘れて我慢してくれることを望んでいるのではないかと述べ、政府の甘えを指摘している。

 同志社大学のジル・スティール氏は、普通なら五輪の失敗は国民の自民党への信頼低下につながるが、国民の大多数が野党の統治能力を疑っているため、自民党はおそらく安心していると述べる。政治的に野党があまりにも弱く、政府はなんでもできるというのが開催強硬の理由と見たようだ。

 ほかにも、「誰も責任者がいないように見えるのが東京五輪」(作家、ロバート・ホワイティング氏)、「開催期間中に感染拡大や事故が起きなければ、放送関係者などの努力でうまくいくかも」(政治学者、デビッド・リーニー氏)、「感染が拡大すれば、責任を負うのはIOCではなく日本政府」(作家、本間龍氏)などの意見があった。

【関連記事】
「名ばかりの大会に」東京五輪開催に、海外から懸念・批判の声
東京五輪、海外も諦めムード? 変異株が追い打ち、より不確実に
東京五輪の開催費、過去最高に 英オックスフォード大の調査

Text by 山川 真智子