米共和党分裂の危機 反トランプ派150人が新党結成ほのめかす

下院共和党会議議長の座を解任されたリズ・チェイニー下院議員|Manuel Balce Ceneta / AP Photo

 アメリカの近代政治システムはこれまで長く、伝統的に民主・共和2大政党に属する議員がほぼ半分ずつ上下院を占め、大統領選でも2党の予備選で選出された各党候補が出馬する、という形が普通だった。しかし、そんな同国の政治システムにいま異変が起こっている。

 昨年の大統領選で敗北したドナルド・トランプ氏とトランプ支持者が大統領選の結果を不服として、大統領選で不正が行われたという「嘘」を土台として起こした数々の訴訟、その後同氏が扇動したとされる1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件、そして弾劾裁判以降、共和党内部でのトランプ派と反トランプ派の分裂が激化しているのである。反トランプ派は、共和党を脱党して新党を結成する可能性を示唆している。

◆共和党は「芯まで腐っている」
 CNNによると、反トランプ派に転じたワイオミング州のリズ・チェイニー下院議員が投票により共和党幹部の座を解任された後、元トランプ政権の閣僚を務めたマイルズ・テイラー氏が中心となり、2016年に無所属として大統領選に出馬したエバン・マクマリン氏など共和党員150人以上が署名した文書を公表。「(共和党)結成時のアイデアに専念した党を再構築するか、そのような代替(となる党)を作ることを急ぐ」ことを提案した。

 テイラー氏はCNNのインタビューで、現在の共和党が「常に民主主義を攻撃し、芯まで腐っている」として、「共和党をリフォーム、または廃止するときが来た」と述べている。

 テイラー氏やマクマリン氏は国会議員ではないが、現役共和党議員のなかにも反トランプ派は存在する。最近下院で行われた、1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件の調査委員会結成に向けた投票では、民主党員全員のほか、前出のチェイニー下院議員やイリノイ州のアダム・キンジンガー下院議員など共和党員35人も賛成票を投じた。上院ではネブラスカ州のベン・サス議員やユタ州のミット・ロムニー議員などが反トランプ派であることはよく知られている。

Text by 川島 実佳